3 華道の家元

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3 華道の家元

「す、すいません… 余計な事をしてしまって… きっとプロの方が生けたお花ですよね…」 私はしゅんとする。 「いや、こっちの方が良い。 初花、アンタ華道の心得があるのか?」 風早さんは尋ねた。 「い、いえ! 心得という程の物では… ただ、祖母が生け花が好きで… あ、私は祖母に育てられたんです! 小さな頃に両親を亡くして… でも、今はその祖母も居ないので、天涯孤独というやつですね!」 私は明るくそう言った。 「そうか、俺と一緒だな…」 風早さんは少し影のある表情でそう言った。 「え…?」 「いや! とにかく気に入った! 初花(ういか)、お前にはしばらく俺の家の家政婦をやってもらう。 抱くか抱かないかは、その後で決める。」 「えぇぇぇぇぇ!?」  処女を渡せば終わりだと思っていただけに、これは意外な展開だった。 しかし、言う通りにするしか… 実際に100万円もの大金を払ってもらった訳だから… ん? でも、70万円はあるし… 「あのぅ、私花屋の店員でして… 仕事はどうすれば…」 「あぁ? お前自分の立場分かってんのか? 100万円の分は働いてもらう。 仕事はとりあえず休暇をもらえるように俺が掛け合ってやるよ。」 風早さんは言う。 「え、でも… 花屋でそんな長い休暇取れるかどうか…」 「俺の個展で使う花を買い占めるとでも言えば問題無いだろう。」 ? この人一体…? 個展…? かざ…はや…! ま…さ…か!? 「あぁ、察しの通り、俺は華道家風早流の家元だ。」 風早さんは何でも無いことのようにそう言った。 風早流といえば、日本の華道の三大流派の一つだ。 まさか、その家元!? 私は目を白黒させた。 じゃ、もしかして…! さっき手直しした桜の生け花は…!? 私は桜の生け花に目をやる。 「あぁ、俺が生けた花だ。 まさか、素人に指摘されるとはな。」 風早さんはおかしそうに笑った。 「ご、ご、ごめんなさい! 知らなかったとはいえ…!」 大変な失礼をしたと気づいた私はそう言った。 「いや、初花、お前の感覚は俺にとっては新鮮だ。 だから、しばらく家に置く。 まぁ、処女ももらってもいいけどな?」 ニヤリと笑って言う風早さんに、私は今更ながら顔を赤くした。
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