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6 野の花のように
それから、私たちは花について色々な事を話し、笑い合った。
とても…
楽しくて楽しくて…
私はただ単純に30万円で処女を買われただけなのに…
そして、きっと彼が飽きたら2度と見向きもされないのに…
野に咲き、無惨に踏まれる花のように…
「そろそろ、夕飯にするか。
初花、厨房から俺の分とお前の分を持って来てくれ。
舞子に一つの膳は頼むと良い。」
風早さんは言った。
「はい。」
私は答えて、厨房に向かった。
げっ、杏奈さんが居る…
とは思ったものの、入らない訳にはいかない。
「あのぅ、家元と私の分の御膳を…」
と言うと、みんなは一斉に動きを止めて、私を見た。
そんなに物珍しいのだろうか?
「あのぅ…?」
「あなた、もう志道様に抱かれたの?」
杏奈さんが私の前にすごい顔で立ちはだかりそう言った。
「え、いえ、あの…」
「志道様はね、新しい物がお好きなだけなのよ。
あなたも…
飽きられたら、すぐに捨てられてよ?
そして、古女房の私の所に戻ってくるわ。
いつもそうなのよ。
期待してたなら、ごめんなさいね。」
杏奈さんはそう言い、私を睨んだ。
そこに舞子さんがやって来て、「もう良いでしょう、杏奈さん?」と言って仲裁に入ってくれた。
「ふんっ!
今だけよっ!」
私は舞子さんと一緒に松の部屋に膳を運んだ。
「入れ。」
相変わらず風早さんが短く言うので、私たちは中に入った。
「それでは、私は失礼します。
ごゆるりと…」
舞子さんが三つ指ついて障子を開け、退席した。
「…薔薇の花が1番好きなのか?」
夕飯を食べながら、風早さんが尋ねた。
まただ…
薔薇の花が好きだと言うと、妙な顔をされるのだ。
薔薇に何かあるのだろうか…?
そう思ったが、嘘をついても仕方ないので、正直に話した。
「私が幼い頃、母はまだ生きていて…
よく薔薇の入浴剤をお風呂に入れてくれました。
それに庭にもミニ薔薇がいくつか。
私は薔薇の花の香りを嗅ぐと、今だに心落ち着くんです。
変ですよね、良い歳にもなって…」
私は言った。
「いや、変では無いだろう…
そうか…」
それだけ言うと、風早さんはまた黙ってしまった。
やはり、言うべきでは無かったのか…?
夕飯を食べ終わると、私はまた膳を下げた。
今度は杏奈さんは居なかったので、正直ホッとした。
そして、また松の部屋に戻った。
「俺は風呂に入ってくる。
あぁ、風呂場はこの部屋に備え付けてある。
お前も後で入れ。」
「は、はい…!」
いよいよ、夜の時間が始まってしまう…!
私は内心緊張して泣きそうだった。
「そんな顔するな。
別に取って食いはしない。」
風早さんはそれだけ言うとお風呂に向かった。
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