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僕のためにおめかし
朝から緊張していて、思わずもう少し待つことになり、気が緩んだのか小用を催した僕。
席を立つなら今だと思い、増田様と侯爵にお詫びを申し上げ、退席した。
侯爵が厠(※トイレ)までの案内を、先ほどのオカメ女中に申しつけられ、僕はオカメの後ろをついて歩いた。
お見合いの席である、18畳の大広間の座敷は、南向きの奥であったために、北側の厠までは、増築されたのであろう廊下や小部屋を通ることになった。
僕は迷わないように、よく邸内を見ながら歩いた。
このどこかで、櫻子様がおめかししていらっしゃるんだな。
僕に会うために!
それを思うと、待たされることなんて、なんともない。
むしろ嬉しい気持ちだ。
北側にある厠に着いた。
他家の女中に、小用が終わるのを待ってもらうのも恥ずかしいので、戻りは大丈夫だとオカメ女中に告げ、下がってもらった。
僕は用を済ませ、さて戻ろうと厠を出た。
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