お見合い前日の夜

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お見合い前日の夜

 とうとう、僕と櫻子様のお見合いの日がきた。    4月の穏やかな晴天で、少し(かすみ)がかった青空に、あちこちで桜の花びらが舞い散っていた。  天気が良くて、寝不足の目にはちょっと沁みる。  僕は昨夜(ゆうべ)なかなか寝付かれず、ゴロゴロと布団の上で寝返りを打っては、ため息をついていた。  僕の自室は西洋から取り寄せた机や、タンスなどを並べている。  父はイギリス時代に寝台(しんだい)(※ベッド)で眠ることに慣れており、僕にも寝台を取り寄せてくれていた。  しかし、九つの時に寝相が悪く、僕は寝台から落っこちてしまった。  幸い、頭にたんこぶを作っただけで済んだのだが、母の 「(たか)ちゃんは寝台を使ってはダメ」 の一言から、僕は板張り(※フローリング)に布団を敷いて寝ている。  暗がりの部屋で、布団の中から目に留まった、細かな装飾の机の脚を見るともなく見て、ぼんやり櫻子様のことを思った。  大炊御門 櫻子(おおいのみかど さくらこ)様。  15歳。  僕との結婚のために、先月女学校を途中でお辞めになった。  このくらいしか知らない。  みんな、結婚相手と出会う前は、このくらいしか知らないものなのだろうか?  それでどうやって、生涯を添い遂げるまでに(むつ)まじく(※仲良く)なるのか?    ……あっ!   まさに、(むつ)みあう(※イチャイチャする)のか!  あぁっ、僕が、女性と……睦み……。  櫻子様……。    美人な(はずの)僕のお嫁さん。  櫻子様と、僕が結婚したら……。    きっとあんなことや、こんなことを……。  あぁ~うまくできるんだろうか?  どんなふうにやればいいんだろう?  わからないことは勉強しなければ……。  でもどうやって?  青木に遊郭(ゆうかく)にでも連れて行ってもらうか?  い、いや、櫻子様以外の女性となんて、いけないことだ。  あぁ~申し訳ありません、櫻子様。  僕は櫻子様一筋(ひとすじ)ですから!! こんな感じで、僕がやっとウトウトしだしたのは明け方に近かった。
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