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夢ごこちのドライブ
僕が櫻子さんと会う前に、『想像していた櫻子さん』は、侯爵令嬢ということから、おとなしくておっとりとした美人だと思っていた。
でも実際の櫻子さんは、とても元気で物怖じせずに誰とでも気さくに話し、それでいて情が深くて優しい。
そしてその姿は思っていたよりもずっと可愛らしく、表情が良く変わって、ほっそりとした体でしなやかに動く。
僕は、清楚で穏やかな明るい子が好みだと思っていたが、まさに櫻子さんはぴったり当てはまる!
……ま、まぁ穏やかな方というには、ちょっと元気すぎる気もするが。
大炊御門邸の廊下で初めて会ったときに、その麗しい姿に一目で心奪われてしまったが、僕は今日また櫻子さんと会って惹かれてしまっていた。
もっと話したい、もっと触れたい。
さっきも僕は、思わず櫻子さんの頬に触れてしまったが、恋というのは、こんなにも自分の気持ちや行動を制するのが難しいものなのか。
こう考えている間にも、櫻子さんの白い手を握りたくてうずうずしてしまう。
僕は櫻子さんと夢のような心地で大炊御門邸へ向かい、お互いに好きな食べ物の話をしたり、今日の僕の装いがとても似合うと褒めてくれて、櫻子さんも洋装に憧れていると話してくれた。
そして、櫻子さんは字が上手なだけでなく絵も描けて、昨日届いた手紙の隅に描かれていた花の絵は実は櫻子さんが描いたものだと聞いて驚いた。
僕は割と口下手な方であるが、櫻子さんが次々に質問してくれたり、僕の話をよく聞いて笑ってくれたり、素直に思ったことを言ってくれるのでとても話しやすかった。
とても楽しい道中であったが、まさかこの後に人生で初めての経験をすることになるとは、露ほども思っていなかった。
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