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「……っ」
愕然としたまま、ふるふると震えて懐くんを見上げた。
しかし懐くんは、そんな私とは裏腹に――。
「今日、一緒帰れる?」
なんて、マイペース!
「ま、まずはちゃんと訂正を……! あれじゃあ、私の“声”が好きなんじゃなく、私の“こと”が好きだって勘違いを……っ」
「勘違いじゃなくない?」
「………………………、へ?」
「てか、勘違いでもどうでもよくない?」
「!?」
「好きなことに変わりない」
「……ッ!?!?」
そう言って、スマートに王子様スマイル。
腕を組んで、小首を傾げて。
主語なんてどうでもいいって、本当にそんな顔をしている。
この人は、絶対。
人の心をかき乱す天才だ。
それをそれを天然にやってのけるから大問題。
教室の真ん中で、フリーズする私を余所に、懐くんはチャキくんに聞いた。
「ここらへんで買い物って、みんなどこ行くの?」
喧噪はもうしばらく、収まりそうになかった。
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