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思わず「おい」と声に出そうになって、顔から表情が消える。
そんな私をこれは面白い材料だと思ったのか、彼らはますます勝手に持ち上がり始めた。
「今まで十数人の可愛子ちゃん、マダム、セレブまで玉砕してきた中、現れたイレギュラー的少女! ――えっと、いくつ? 中学生? あ、もしや小学生くらいかな!?」
なんて、失礼なことまで言い出して、怒りを通り越して殺意が湧き始める。
はた迷惑すぎて、即座に通報してやりたい。
目の前で寝ているこの男も、もしやこいつらのグル!?
キッと睨みを利かせ、ずかずかと彼に近づく。
こんなの絶対、寝たふりしているに決まっている。
だからいくら呼んだって叫んだって、起きないふりをしているだけで――。
こうなったら、どうやったって起こしてやろう。
「――っ」
ぎりっと奥歯を噛みしめて、ベンチに座ったまま微動だにしない彼に近づいた。
全力で耳元で怒鳴ってやる――。
ドスドスと怒り心頭で近づいたその時だった。
「――おい」
という彼らの声に気づいた時には既に遅く。
かかった足。
引っかけられていた足!
バランスを崩しながら見た世界は、なんと本当にスローモーションに見えた。
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