プレゼンテーション上手な彼女

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プレゼンテーション上手な彼女

 記憶の時をさかのぼること三十五年前(恐ろしや)…。  家の近所の府立高校を入学して、初心者にも関わらず迷わず吹奏楽部に入部した私。吹奏楽と言えば、毎年八月初旬に全国高等学校吹奏楽コンクール○○府予選大会と言う大きな大会があります。  そのコンクールの地区予選で万年銀賞の為、『今年こそは金賞!』の目標を掲げて、毎年夏休み入ってすぐに近隣の県の高原で強化合宿があり、合宿先まで高校発の貸し切りバスで行きました。 📚️ 📚️ 📚️  合宿当日の朝、高校まで迎えにきた貸し切りバスに部員全員と顧問の先生が乗って、バスが出発すると、私の横に座っている友達の東山由美子さんことゆーみさんが、私の肩をちょんちょんとつつきました。 「ゆーみさん、どうしたん?もしかしてやばい?」 「やばいって何?」 「えっ?バスの匂いでゲロリンパ?」 「まだ、ゲロリンパになっていない。大丈夫!ありがとう!」 「そしたらどうしたん?」 「これこれ!バスの中暇やし、これ読まへん?」 と言って、一冊の本を見せてくれました。そして、何故か急に苦笑いしたゆーみさん。 「本嫌い?すごい嫌そうな顔してる」 「そんな、顔に出てた?」 大きく頭を上下に振るゆーみさん。今度は、私が苦笑いをする番で、恥ずかしい…。 気を取り直した様子のゆーみさんが再び話す。 「この本な、小説やねんけど、マンガみたいやねん。イラストもほら、小説に比べたら沢山あってマンガみたいな絵やろっ?」 って言いながら、イラストがあるページを見せてくれた。 「ほんまや。マンガみたい…。」 少女マンガのようなイラストを見て、私の心の天秤が【読む】に少~し、ほんの少~し傾むく。そんな私の心の動きを知ってか、更にゆーみさんは話を進める。 「話の内容な、恋愛ものやねん。私、読んでんけど、私らと同じ学年の高一の女の子が主人公でな、憧れてる先輩がいる部活のマネージャーしたい、あわよくばその先輩と付き合いたい!そやからそんな私に付き合って一緒にマネージャーしよって、そのコに無理矢理誘われてん。で、結局そのコと一緒にマネージャーすることになってん、主人公のコ。最初はとにかくが嫌九割、残り一割が、マネージャーするのってマンガの中の話みたいですごいって感じやってん」 と、ここでいったん話を止めて、一回深呼吸。ひざの上に置いているパンパンになっている小さいカバンから水筒を無理矢理引っ張り出して、お茶を飲んで、一息つく。そして、話し出すゆーみさん。 「でも日に日にマネージャーの仕事にやりがいを感じたんもあってんけど、部内に同じクラスの男の子がいて、ちょこちょこ話す機会が増えていってん。気が付いたら気になる存在になっててん。その頃には嫌々してたマネージャーの仕事がウソみたいに好きになってて、そしてその後の話の展開が、グフフッ♥…て内容やねんけど、騙されたと思って読んでみいひん?」 オススメ上手なゆーみさん。私の心の天秤が【読む】にグイグイ傾むく。
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