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待つこと三分。
「ミキー、ミーキーー!」
部屋の奥から私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「なにーー?」
大きな声で返事をした。
「もうすぐそっち戻るしーー!」
なんじゃ、そりゃ…と、滑りそうになりながらも返事をする。
「わかったー!気を付けて戻ってきてなー」
気を付ける距離でもないけど…と自分に突っ込みを入れてみる。
バタバタっと走る音が聞こえて、音のする方を見ると、お母ちゃんが小走りで右手に封筒を持って戻ってきた。
「お待たせ、ミキ。あったわー。」
私に封筒を見せてから、封筒から手紙を出して私に渡す。
「なにこれ?もしかして、読めと…?」
お母ちゃんが嬉しそうに頭を大きく上下に振る。言われるがまま手紙を声を出さずに読んでみる。
「えっ!お母ちゃん、趣味の短歌、新聞に載ったん?スゴいやん!で、それのお礼が図書券…で、…ん?さ、三千円…五千円と違うんや…」
「五千円やと思ったら三千円やってん。ごめんな。でも、スゴいやろ!お母ちゃん本人が一番ビックリしてん。まさか新聞に載るなんて!」
ホンマに嬉しかってんやなぁと分かるくらい目尻を下げてニコニコしているお母ちゃん。そんな大事な記念になる図書券、私が貰って使ってもいいのかと、ふと考える。
「そんな大事な記念になる図書券、私が貰って使ってもいいの?」
「いい、いいー!使って、使ってー。お金とおんなじで、使わな勿体ない!それにこれからも何回か載る予定やし、気にしんといて!でも、ミキの気持ちすごい嬉しかったわ…ありがとう!」
と言いながら、封筒の中から図書券が入っている小さな封筒を取り出して、「はい」っと言って、私に渡してくれた。
「こっちの方こそ、大事な記念の図書券ありがとう!大事に使うわ。そしたら、早速本屋さんに行ってくるわ!」
「駅前の大きいとこ?」
「うん、そう!本じっくり選んでくるし、ちょっと帰ってくるの遅くなるけど、心配しんといてな~」
「わかったけど、時間わかるように腕時計して行きや」
「してる、ほら!」
「わかった!気をつけてな」
「わかってる。ありがとう。行ってくる」
私は、図書券が入ってる封筒をカバンの底に入れて、その上におもしがわりに財布を載せて、ドアを開けて振り返って、お母ちゃんに小さく手を振って、静かにドアを閉めた。
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