ローストビーフ

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ローストビーフ

 (さて、ここまでの料理は炭水化物のオンパレードだ……。そろそろタンパク質を摂ろう……。そういうわけで、肉が食べたくなってきた。それも薄くスライスされた高級感のある赤身肉を……。少々気温が高いので涼し気に食べたい。それなら……。)    「ローストビーフが……、いいですよ……。ただ単に赤身肉を食べたいなら焼肉にして食べるとか、他に方法はいくらでもあります……。低温での肉の食感を求めるなら……。やっぱりローストビーフです……。」  チン……。今度はキッチンの左隣にある冷蔵庫から音が鳴り、静かにその扉が開いた。その中には、丸い皿に一枚一枚円を描くように豪華に盛り付けをされた、赤身の引き立つローストビーフが用意されていた。それから、忘れてはならないローストビーフ専用のタレも小皿に浸してある。  (だから、どうしてこうも用意がいいのだ……?)  実際、今の技術ではあり得ない事が起こっている。こちらの提案した料理が、人手なしで即座に用意されて出てくるのだから。そう気にしながらも、薄くスライスされた赤身肉をタレに漬け、口へと運ぶ。    (これは……!)  薄い赤身肉の独特の旨みが凝縮された食感、ソースの風味が絶妙に交わった味わいがなんとも言えず最高! 欲を言えば赤ワインが欲しい。そう思いながら数枚を残し、平らげた。  すると。ライフポイントが追加で3つ点灯した。 現在ライフポイント8。  赤ワインがあれば5つ追加点灯はくだらないだろう。それぐらい赤身肉と赤ワインの相性は抜群だ。  (さて、ローストビーフはソースもいいが、高級の塩との相性も抜群だ。とはいえ、いつまでもこんな茶番に付き合ってはいられない……。)  料理の旨さですっかり危機感が薄れていたが、両の手足は手錠、鎖で拘束されている。脱出方法も考えなければならない。拘束された緊迫感の中で策を練る。 (手錠……。鎖……。金属……。錆び……。!? ならば!) このあと、思い切った行動に出た。
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