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「手術を受けろ」
「いやだ」
「俺がする。見知らぬ医者に託すより希望はあるだろ」
「むしろ不安しかないですー。そんなこと言って、本当は私のこと殺したくてたまらないんじゃないの」
言葉なく、空気だけで伝える。
ふざけたこと言ってんな、それ以上言ったら本気で怒るぞ、と。
「…お前、死にたいのか」
「…ちがうよ。ただ、こうしてると構ってもらえるから。そんな時間を味わいたいのかも」
天涯孤独の身。
悪性の脳腫瘍、放っておけば余命は半年。
俺より7つも年下の女は、無邪気に笑った。
「どうせ手術成功したとしても…治るわけじゃないんでしょ?」
たまに見せる、憂いた表情。
本人は笑っているつもりなのだろうが、まったくと言っていいほど下手くそだ。
もしそれが子供が精いっぱい背伸びをするような、格好つけて大人ぶったようなものだとすれば。
……そんな泣きそうな顔、しねえよな。
様々な患者を取り扱ってきた医者が笑える。
こいつの扱いだけは、どうにも戸惑っては仕方がない───。
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