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そのまま私を抱き上げると、彼はリビングを出た。
キスをして自信でも取り戻したのか、キスさえしておけば私は大人しくなるとでも勘違いしているのか、移動する途中でも何度か奪われた唇。
「ひとりで…浴びれる、から」
「俺は今日、お前を抱くつもりだ」
「…え……」
表情ひとつも変えず、言い切ってしまう。
この男はきっと、恥じらいという感情を捨てきっているのだ。
そこの部分が大きく欠如しているんだ。
脱衣場にて服をすべて脱がされてしまった私は、バスチェアにうずくまるように座っていた。
「温度は平気か」
「…うん」
しっかりと人肌の温度に調節してくれたシャワー。
ただ私は止まらない涙を流しながら、肌を撫でる不器用な手に任せていた。
「……もうすぐ死ぬ人間の身体は、どうですか」
キュッと止められたシャワー。
ボディーソープをプッシュして、泡立てる。
身体を硬直させて構えていると、やはりそのまま向かってくる手。
「俺のものにするから問題ない」
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