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「これが、今おまえの頭のなかにある腫瘍だ」 「へえ、こんなにハッキリ見えるんだ~。やっぱ今の時代の技術ってすごいねセンセ」 「……ここが大脳。その神経に食い込んでるのが分かるか」 「あー、ほんとだ。これはさすがにね、大変だよねー」 相変わらず他人事な女だ。 これは自分の脳内だというのに、誰か別の人間のものだと勘違いしてるんじゃないのかと、本気で心配になる。 「…入院生活はどうだ。お前があんなに避けてた病院での生活は」 「んー、美人な看護師さんが多いから男たちは嬉しいんじゃない?」 「んなことを聞いてんじゃねえ」 「うわ、クチ悪…。……介護されてる感じ。退屈だよ」 最初は入院すらしてくれなかったが、やっとここまで連行させることができた。 だとしても俺がどうこうしたわけじゃなく、進行してゆく病気に説得されたようなものだ ろう。 能天気に笑っている女は、これでも余命半年と言われているのだ。
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