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家に到着して呼び鈴を鳴らすと、茉莉花の父が出迎えてくれた。
「お父さん、久しぶり」
「おお、茉莉花。元気にしてたか?」
「うん。あ、えっと…彼がこの前話してた、吉田龍也さんです」
茉莉花に紹介され、龍也は頭を下げる。
「初めまして。吉田龍也と申します」
「こちらこそ初めまして、茉莉花の父の藤本 雅隆です。茉莉花から話は伺っています。立ち話もなんなので、どうぞ中に」
雅隆はニコッと笑って、快く龍也を中に入れる。
雅隆の後に続いて龍也と茉莉花は中に入り、リビングに向かった。
「お帰りなさい、茉莉花」
リビングには茉莉花の母・美織が待っていた。
今日の為に休みを取ってくれていると茉莉花から聞いてはいたが、オフでも消しきれていない芸能人オーラを龍也は感じた。
「茉莉花の母です。娘がいつもお世話になっております」
微笑んではいるものの、圧倒的な存在感を放つ美織を前に龍也は萎縮してしまう。
それでもここで負けるものか、と龍也は自分を奮い立たせ、美織の前に立った。
「は、初めまして…!茉莉花さんとお付き合いさせていただいている、吉田龍也と申します!本日はお忙しいところ、時間を割いていただきありがとうございます…!」
「いえいえ、こちらこそ。わざわざ遠方からご挨拶に来ていただいて申し訳ないですわ」
「いえ、近いうちにきちんとご挨拶させてもらいたいと思っていましたので!あと、これつまらないものですが…!」
美織は一瞬目を丸くしたものの、龍也の真剣さにふっと微笑む。
「ふふっ…」
急に笑った美織に、龍也は頭の上に?を浮かべる。
「…ど、どうかされましたか…?」
「いえ、わざわざすみません。有難くいただきますね」
龍也の手から菓子折りを受け取ると、美織は茉莉花を見る。
「茉莉花って面倒な性格でしょう?しっかりしてるんだか頼りないんだかよく分からないし…。振り回されたりしてませんか?」
「そんな…。茉莉花さんはいつも笑顔で俺…いや、僕のことを笑顔にさせてくれる方です!表情がくるくる変わって、目が離せなくて…。とても、可愛らしい方だなって思ってます!」
龍也が茉莉花を振り返って見つめると、茉莉花は耳まで赤くなる。
「あら、茉莉花が珍しい」
「ほんとだな」
母と父は揃って照れている娘を見て言った。
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