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──『ただいまー!』
玄関から明るい声が聞こえて、続けてバタバタと走る足音が聞こえてきた。
「あら、来たわね」
美織がそう言うと同時に、リビングのドアがバン!と開いた。
「おじーちゃん、おばーちゃん!」
入ってきた女の子が一直線に雅隆と美織のもとへ飛び込んでいく。
「久しぶりね、梨桜ちゃん。元気にしてた?」
梨桜を抱っこして、美織は嬉しそうに尋ねる。
「うん!あのね、おうちにくるまでに、パパにおかしかってもらったよ!」
「そっかぁ、パパ優しいねぇ〜!」
その光景を見つめている龍也の袖を茉莉花はついついと引っ張った。
「妹の子供です」
「あ。えっと妹さんって、確か6つ下って言ってたっけ?」
「うん」
茉莉花と龍也が話していると、リビングに夫婦が入ってきた。
茉莉花はすぐさま夫婦のもとへと駆け寄る。
「梨々花」
「待たせちゃってごめんね、お姉ちゃん」
「ううん、こっちこそ忙しい時にごめんね」
笑顔が茉莉花とよく似た女性が、龍也を振り返って微笑む。
「初めまして、妹の蓮見 梨々花です。いつも姉がお世話になってます。あと、主人の風斗です」
「どうも。初めまして」
梨々花に紹介された風斗が頭を下げる。
「こちらこそお忙しいところわざわざすみません。茉莉花さんとお付き合いさせていただいている、吉田龍也と申します」
パッと下げていた頭を上げると、梨々花の手に抱かれている子供と目が合った。
龍也の視線に気が付いた梨々花は、龍也に子供の顔が見えるようにする。
「梨桜の弟で奏斗っていいます」
じいっと奏斗は龍也を見つめている。
「奏斗くん、初めまして」
龍也が奏斗に微笑みかけると、奏斗はにたっと笑った。
「あら、珍しい。普段、奏斗は人見知り激しくて、初対面の人にはすぐ泣いちゃうんですけど」
「えっ、そうなんですか?」
「はい。でも泣かないなんて吉田さんのこと、いい人だって見抜いてるのかも」
梨々花はふっと微笑む。
「昔、幼なじみの子供の面倒をよく見てたので…。それでですかね」
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