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「ありがとう、茉莉花。お前のその言葉だけで、十分救われるよ」
「…お父さん…」
「今まで長女として、いろいろ我慢しなければいけないことだってたくさんあっただろう。けれど、もう何も気にしなくていい。茉莉花はこれからの人生を龍也くんと共に過ごしなさい」
「…っ、うん…!」
父の言葉に触れ、茉莉花は涙ながらに頷く。
雅隆は茉莉花の頭を撫でながら、龍也を見た。
「私は…茉莉花には誰よりも幸せになって欲しい。君には、茉莉花を泣かせることなんてしないで欲しいと思っている」
「はい、勿論です!」
龍也が力強く頷く。
「必ず、茉莉花さんを幸せにすると誓います。不安になんてさせないよう頑張ります!」
真剣な眼差しで雅隆を見つめる龍也に、雅隆は視線を落として小さく息をついた。
「……茉莉花が選んだ君だ。必ずそうしてくれると信じているよ」
「!」
「娘を、どうかよろしく頼みます」
雅隆は静かに頭を下げた。
「…はははっ。懐かしいなぁ」
龍也の顔を見て、雅隆が微笑む。
「思い出すよ。私が妻の実家に挨拶に行った時のことを…。自分もあの時同じこと言ったなぁってね」
「そうだったんですね」
「妻は今でも変わらず綺麗で、昔からモテていたから私なんて眼中にないって思っていたけれど…。告白された時は驚いたなぁ」
「「えッ?!?!」」
雅隆の驚きの発言に、茉莉花と龍也は二人して声を上げる。
「な、なに…まさか、逆プロポーズなの?!」
「意外だろう?」
「し、知らなかった…。ていうか、そんなの今まで教えてくれなかったじゃん!」
「いやぁ、さすがに母さんの居る前では言えなくてな。知ったら恥ずかしがって怒ると思うぞ?」
「やだ!怒られるのはめんどい!」
「はははっ」
親子の会話を交わす二人を見て、龍也はふっと笑った。
その様子に気が付いた茉莉花と雅隆は、同時に龍也を見る。
「龍也さん?どうしたの、急に笑って…」
「あぁ、いや。仲良いなと思って。普段、茉莉花さんはご両親の話をしないので、いつもこんな感じで話してるのかと思ったら、なんか…あったかいなぁって…」
龍也の言葉に、茉莉花は少し頬を染める。
「茉莉花は素直じゃないからねぇ。でも、ある意味分かりやすい子ではあるよ」
「もう、お父さんってば!」
軽く父を小突く茉莉花を見て、龍也は改めて強く思った。
『絶対に、彼女を大切にする』と────。
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