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家族間での挨拶も終えたことを報告すると、大層興奮した様子で藍音が尋ねてきた。
「えッッ!!??もう?!じゃ、何?!もう結婚しちゃうの!?!?」
「気が早いよ。まだすぐってわけじゃないよ」
「で?で?!向こうのご両親とはどんな感じ?!」
「やたら食い気味に聞いてくるじゃん」
「だって!気になるじゃん?!恋愛なんてーって言ってた親友がついにだよ?!こんなの気にならない方がおかしいって!」
「やたらはっきり言うな…」
茉莉花は紅茶を一口含むと、静かに飲み込んだ。
「どうって…普通に優しい良いご両親だったよ。寧ろ凄く喜ばれたし、大歓迎って言ってくれて」
「良かったじゃん!だって吉田さんって、彼女のかの字も感じないくらい仕事人間って思ってたから、私もなんか嬉しい!」
「向こうのお母様にも同じこと言われたよ。『ずっと彼女の話も全然しないし、このままなのかもって思ってたから不安だったのよ〜』って」
「やっぱりね!でももう安心だわ〜」
藍音はそう言うと、伸びをしてから笑顔を見せる。
「結婚式とかいろいろ決まったら教えてよ?絶対行くから!」
「だから気が早いって。でも…ありがとう、藍音」
「なんでお礼?」
「うーん…なんとなく?」
二人で笑い合っていると、バタバタと慌ただしい足音が聞こえてきた。
「すいません!遅くなってしまって」
そこには焦った様子の龍也が立っていた。
「えっ?りゅ、龍也さん???」
「はいはーい!お疲れ様です♪お仕事、大丈夫でしたか?」
「はい、なんとか片付きました。無事に承諾していただけたので」
「それなら良かったです」
藍音がほっと胸を撫で下ろす。
「それじゃ王子様も来たことだし、私はそろそろ帰るわね」
藍音はこそっと茉莉花に耳打ちすると、席を立った。
「えっ、ちょっ…ちょっと待って!なんで龍也さんが…」
困惑する茉莉花に、藍音はニヤリと笑う。
「お邪魔虫は退散しますわ。今から二人っきり、ゆーっくりデートでもしてきなさいな♡」
「えっ?!どういうこと?!」
藍音の服の袖を掴んで引き留める茉莉花に、藍音は小さく溜息をついた。
「今日、吉田さんと本来は一緒に過ごすはずだったんでしょ?それが急なお仕事入っちゃって、一人じゃ暇だから私を呼んだんでしょうが」
「そ、それはそうだけど…」
「私がここに居るって伝えたの。そしたら吉田さんが仕事終わらせてから向かうって」
「!」
茉莉花が龍也を振り返ると、龍也はにこっと微笑んで見せる。
「急に驚かせてすみません。せっかくの休みだった日を仕事で潰して終わるなんて嫌だったので」
「龍也さん…」
「それじゃ、行きましょうか」
龍也は藍音の手から伝票を抜き取ると、茉莉花の手を掴んで行き、支払いを済ませて店を出た。
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