1.ほんの一瞬の出会いから

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1.ほんの一瞬の出会いから

「あー…しんどい…!」 カウンターに突っ伏して本音を零した。 「相変わらずみたいね…。お疲れ様」 隣に座っていた親友の成瀬(なるせ) 藍音(あいね)が、背中を摩ってくれる。 「あんのクソジジイ、また修正に文句つけやがったからやり直しだし、渡辺チャンは相変わらずだし、面倒なことばっか押し付けてくるし!もうなんなの?!会社はアンタの男漁りのためにあるんじゃねぇですから!!あとあたしは便利屋じゃねぇです!!」 一息で言いたいことをぶちまけて、グラスに残ったカクテルを一気に飲み干す。 「あ"─〜…くっそムカつく…!」 「大荒れね。ヤケで飲みすぎないでよ?」 「いや!もう今日はめいっぱい飲んでやるって決めたから!ゆーた!!おかわり!!!」 茉莉花はカウンターの向こうに立つバーテンダーに向かって空いたグラスをヒラヒラさせた。 「ったく、飲みすぎたらタチ悪くなるからやめろって言ってんのに…相変わらず人の話聞かねーのな、茉莉花は」 彼、桜坂(おうさか) 悠多(ゆうた)は、茉莉花の同い年の幼なじみで、このバーを経営している。 「あん?こちとら客だぞ?店に貢献してるんだぞ?いいから黙ってさっさと酒出せや」 「ほら、そういうとこだっての!いちいち突っかかってくんな!お客は神思考やめろ!」 舌打ちしながらも、悠多は同じものを仕方なく茉莉花に差し出した。 「…っぷはー!」 茉莉花はそれを勢いよく飲み干すと、グラスを置いて机にまた突っ伏した。 「もう、茉莉花ってば。一気飲みしないでゆっくり飲みなさいよ!ぶっ倒れるわよ?」 藍音が心配そうに茉莉花の顔を覗き込む。 「ん〜…らって、飲まなきゃ…やってられないんらもん…」 呂律が回らないままぶつぶつと呟く茉莉花を見て、困ったように藍音は悠多を振り返る。 「多分そのまま寝るでしょうから、ほっといてやって下さい。酔いが()めたら起きるでしょうし」 「…そうですね」 藍音は苦笑した後、着ていたカーディガンを茉莉花にそっと掛けた。
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