1.ほんの一瞬の出会いから

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悠多が店の掃除と片付けを終えてグラスを磨いていると、茉莉花がようやく起きてきた。 「…んぅ〜……はれ…?ここどこ……?」 「俺の店だよ、バカ」 すぐさまツッコミを入れると、茉莉花は寝ぼけ眼で悠多を振り返る。 が、すぐに覚醒して店の中をきょろきょろと見渡しだす。 「…あッ!そうだ、藍音は?!」 「とっくに帰ったよ」 「そんなぁ〜!あたしを置いて行きやがったのか、あの薄情者めぇ〜!」 「お前が変に飲みすぎて寝るからだろ。むしろそっちの方が薄情だよ。今何時だと思ってんだ」 「うっさい!てか水よこせ!」 「お前まだ酔ってんな!水飲んだら帰れよ!」 水を注いだグラスを茉莉花の前に荒くたく置いて、悠多はグラスを磨きに戻る。 「…っぷは…」 茉莉花はそれを一気に飲み干し、濡れた口元を拭ってようやく席を立ち上がった。 「お会計!」 「もう済んでる」 悠多の言葉に茉莉花はきょとんとした。 「え、済んでるって…どゆこと?」 「成瀬さんが払ってった」 「え?!」 「お前が寝てる間に代金払って帰ったよ。あとそのカーディガン、成瀬さんのだから。ちゃんと返しとけよ?」 悠多に言われ、肩に掛けられたカーディガンの存在に気付く。 「ほんと…。いい親友(ひと)だよな、あの人。お前には勿体ねぇわ」 「……うん。ほんと、そうね」 茉莉花はカーディガンにそっと触れて頷いた。
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