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悠多が店の掃除と片付けを終えてグラスを磨いていると、茉莉花がようやく起きてきた。
「…んぅ〜……はれ…?ここどこ……?」
「俺の店だよ、バカ」
すぐさまツッコミを入れると、茉莉花は寝ぼけ眼で悠多を振り返る。
が、すぐに覚醒して店の中をきょろきょろと見渡しだす。
「…あッ!そうだ、藍音は?!」
「とっくに帰ったよ」
「そんなぁ〜!あたしを置いて行きやがったのか、あの薄情者めぇ〜!」
「お前が変に飲みすぎて寝るからだろ。むしろそっちの方が薄情だよ。今何時だと思ってんだ」
「うっさい!てか水よこせ!」
「お前まだ酔ってんな!水飲んだら帰れよ!」
水を注いだグラスを茉莉花の前に荒くたく置いて、悠多はグラスを磨きに戻る。
「…っぷは…」
茉莉花はそれを一気に飲み干し、濡れた口元を拭ってようやく席を立ち上がった。
「お会計!」
「もう済んでる」
悠多の言葉に茉莉花はきょとんとした。
「え、済んでるって…どゆこと?」
「成瀬さんが払ってった」
「え?!」
「お前が寝てる間に代金払って帰ったよ。あとそのカーディガン、成瀬さんのだから。ちゃんと返しとけよ?」
悠多に言われ、肩に掛けられたカーディガンの存在に気付く。
「ほんと…。いい親友だよな、あの人。お前には勿体ねぇわ」
「……うん。ほんと、そうね」
茉莉花はカーディガンにそっと触れて頷いた。
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