1.ほんの一瞬の出会いから

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同い年で親友の藍音は同じ会社で働く同期だったのだが、とある事情により会社を辞めて引っ越し、現在は違う会社に勤めている。 そんな彼女には、実は10も年の離れた年下の彼氏がいて、その相手はなんと、かの有名な大企業・東城寺(とうじょうじ)グループの総帥の孫である東城寺 琉架(るか)。 しかも彼は、これまた超有名企業の水上(みずかみ)ホールディングス会長・水上 陽斗(はると)異母弟(おとうと)でもある。 この二人が付き合うに至るまで、複雑な事情とか恋愛模様がいろいろあったが…まぁ、とにかく凄いし羨ましい!!その一言に尽きる。 今日はその藍音から、結婚が決まったという報告を受けたのだった。 「結婚…かぁ」 茉莉花が呟くと、悠多が顔を上げた。 「付き合ってるんだから結婚したっておかしくないだろ?」 「やだッ!うちの藍音はあげないっ!!」 「急に叫ぶな!ていうかお前の成瀬さんじゃねぇだろ」 「年下男め…許さん…!!」 「はいはい、寝言言いたいなら早く帰れ」 悠多は茉莉花の鞄を取り、それを渡して茉莉花を入口まで押し出す。 「ちょっと、押さないでよ!」 「こっちは明日の準備もしてから帰りたいんだよ。さっさと帰らねぇと片付かねぇだろ。ほら帰った帰った!」 悠多は言い切ると、完全に茉莉花を外に追い出して店の扉を閉めた。 「ちょっと!乱暴な男はモテないぞ!!バカーっ!!」 茉莉花は扉に向かってその一言をぶちまけ、ようやく踵を返して家路につく。
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