見知らぬ駅

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 男の子と女の子は電車に乗っていた。並んで座って、流れる景色を黙って見ていた。電車は下り電車だった。O宮から北O宮へ下っていた。 「次は、踏切山(ふみきりやま)、踏切山」車内アナウンスがあった。    男の子は車内の路線図をみた。O宮と北O宮のあいだに、踏切山という駅はなかった。電車は踏切山で停車した。チャイムがなった。ドアが開いた。登りの時と同じだった。 「じゃあね」女の子はいった。 「じゃあね」男の子もいった。  女の子はホームへ降りた。一度振り返った。何かをいいかけた。何もいわなかった。彼女は走り去った。その後男の子の前に、踏切山が現れることはなかった。
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