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cherry love
お前って人を本気で好きになったことないだろ。可哀想だな。
彼にそう言われた20の春。
あの光景が今も忘れられない。
彼は俺のセフレの親友だった。
そして俺が一生敵わない相手。
何をしても勝てない。
だから俺はわざと彼の親友を落として捨てた。
そうすれば少しだけ気が晴れると勘違いしてた。
どうしようもないクソガキだった。
彼に言われた通り、俺は人を好きになったことがない。
自分が一番大事だった。
大学を出て社会人になって、営業先で彼と再会した。
彼は相変わらずで、うちの上司にも気に入られてた。
飲みの席で一緒になったが、彼は俺のことなんて完全無視。
さすがの俺も凹んだ。
帰り際、上司を見送り駅まで歩きだした時目の前に彼が現れた。
「久しぶりだな才藤。」
正直怖かった。
身長も高いし、顔も怖いし。
「お、おう。」
「ちょっと飲みに行かないか。」
予想外だった。
まさか誘われるとは。
未だに許されてないと思ってたのに。
お店に行くのかと思いきや彼の家だった。
家具もほとんどない質素な家。
出されたお酒はウィスキーのストレートのみ。
酒に強くない俺はすぐに潰れて寝てしまった。
ふと目が覚めると俺は完全に彼に抱かれた後だった。
ケツに違和感。
裸だし。
コンドームも落ちてる。
これは完全に事後。
でもなんで?
「起きたか。」
「俺になにした?」
「お前が昔、佑哉にしたことと同じことだよ。」
「お前、まだ俺のこと。」
「許すわけねぇだろ。佑哉はあの後鬱になって引きこもりになった。」
「え?」
「全部お前のせいだ。写真もバッチリ撮らせてもらった。これバラまかれたくなかったら俺の言うこと聞くんだな。」
「こわぁ。相変わらずだなお前。」
「あ?」
「昔から佑哉のことになるとムキになるというか。まだあいつのこと好きなの?」
「あいつは俺の親友だ。そんなんじゃない。」
「うそつけ。ずっと好きだったんだろ。分かるんだよ。」
「なにが?」
「お前の視線の先にはいつもあいつがいたから。だから俺はあいつに近づいた。あいつには悪いことしたと思ってる。」
「じゃあ全部俺のせいだったってことか。」
「いや、お前は悪くない。俺が全部悪い。」
「俺さえいなければあいつはあんな目に。」
「だからお前のせいじゃないって。」
「そもそも、なんでそんなに俺はお前の目の敵にされなきゃいけなかったんだ?」
「嫉妬だよ。お前にはなにしても勝てなかったし。いつもお前と比べられて嫌な思いしてきたし。」
「勝つとか負けるとか考えたことなかった。そんなこと言ったら俺にだってお前に勝てないことはあるだろ。」
「え?いやないと思うけど。」
「今日だって飲みの場で一言も喋れない俺と違ってお前は上手く立ち回って盛り上げてたし。うちの上司はお前のことえらくお気に入りだし。」
「そ、そうか?」
「俺だって完璧じゃない。」
「まぁ、そうだよな。」
完璧じゃない、と認められるとこがまた完璧なんだけどな。
そう思いながら立ち上がろうとしたら腰に力が入らなかった。
「お前どんだけヤッたんだよ。」
「え?いやそれが止まらなくて一時間ほど。」
「はぁ?耐久力ありすぎだろ。」
「スイッチ入っちゃってつい。」
「俺の中、そんなに気持ちよかった?」
「わからん。何せ初めてだったからな。」
初めて?ってことはこいつ27で童貞だったのか!
「酔いつぶれてる人間相手によくやるよ。おもんないだろ。」
「面白いとかあんの?」
「あるよ。試してみる?」
断ると思って冗談で言ったのに俺は軽々とベットに押し戻された。
「え?まじ?」
「まだヤれる。」
ヤバイ顔してる。
これは初めてでハマってしまったやつだ。
しかも、俺たちは体の相性がよすぎた。
初めての癖に俺の性感体を網羅してやがる。
喘ぎすぎて喉かれる。
それが一時間も続いた。
ヤバイそろそろ限界だと思ったとき、彼も限界だった。
正直彼の顔が紅潮していく様があまりにもエロくて見れられなかった。
「やば。お前才能ありすぎだろ。」
「勉強だけはめちゃくちゃした。」
「勉強?」
「この日のためだけに。」
「俺を抱くために?」
「うん。」
「お前バカだろ。なんでわざわざ初めての相手を俺にすんだよ。」
爆笑しすぎて腹がいたい。
「確かに言われてみたら。でもお前可愛かった。お前でよかった、初めてが。」
はぁ??
はてなマークが頭に浮かびまくってるのに彼は俺にキスをした。
「おもしろかった。お前の反応とか喘ぐ声とか聴きながらヤるの。」
「またヤる?」
「いいね。」
「やっぱバカなの?佑哉のことはいいのかよ。」
「復讐は終わったし。それにこれは俺の自己満足だ。佑哉は来月結婚して子供生まれる。」
「へ?」
「ちゃんと幸せになる。」
「お前はそれでいいのか?」
「もちろん。あいつには幸せになって欲しい。」
「じゃあお前の幸せは?」
「俺の幸せ、?」
「仕方ねぇなぁ。俺が幸せにしてやるよ。」
何の気なしにそんなことを言ってしまった。
あの日からもう5年が過ぎた。
俺と彼は一軒家を買って一緒に暮らしている。
犬と猫も飼った。
まるで夫婦のように寄り添っている。
よく考えたらとても謎だ。
どうしてこんな流れになったのか。
でも最近ふと思うことがある。
俺はあの頃からずっと彼が好きだったんじゃないか、と。
たから彼が佑哉を好きなことにいち早く気付いたのかもしれない。
まぁ悔しいから絶対に言わないけど。
一緒に暮らすようになって分かったけど、彼は仕事以外のことは本当にポンコツだ。
家事はほとんど俺がやってる。
よく生きてこれたなと思う。
ただ未だに絶倫だ。
歳を重ねてもそれだけは変わらない。
そして未だに言う。
「かわいい。」
そう言われると許してしまう。
「あいつ、会うたびにノロケ話しかしないんだけど。」
佑哉にいつもそう聞かされる。
「何て言ってた?」
「俺は佑哉のおかげでいい嫁と出会えた。感謝してるって。」
笑うしかなかった。
てか嫁かよ。
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