6人が本棚に入れています
本棚に追加
歩美さんに促され、店に入る。そこはテーブル席が一つと、焦げ茶色のカウンターの前にある椅子は四つの、小さな喫茶店。
でも、普通の喫茶店とは違うところがある。右手には、真っ白なカウンターがあり、インフォメーションと書かれているのだ。
「左側は喫茶店で、右側は案内所。迷ってる人は、一旦ここで休んでほしいって思いで、こんな感じに」
「喫茶店と観光案内所。いい組み合わせですね」
足が疲れているから、休憩しながら場所も教えてもらえるなんて、方向音痴な私にとっては最高の場所だ。
「ここ、コーヒーしかないねんけど・・・、いい?」
「はい!いただきます!」
私がそう返すと、歩美さんはカウンター前の椅子を勧める。私はその席に座った。
すると、一つ空けてカウンターに座るおじいさんに話しかけられる。
「なんや、迷子か?」
「はい、お父さんと待ち合わせしているんですけど、逆方向に来てしまったらしくて・・・」
「お父さんとか。どこで待ち合わせや?」
「時空の広場です」
その場所を言うと、おじいさんは目を丸くした。
「それは・・・、確かに逆方向やな」
「もう、自分の方向音痴が嫌になります」
「う〜ん。この場所では、方向音痴あまり関係ないんとちゃうかな」
私達の会話に入ってきたのは歩美さんで、コーヒーを置きながらそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!