憐れよの~

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 俺は突然今日からじっちゃんに実践修行という名目で、都心部から少し離れた場所にある山に連れて来られていた。そこでは不気味な力を感じバイヤーと思っていた矢先、陰陽師の変な女が出て来やがった。  コイツ神奈って名前は可愛いくせに、イキナリ俺の事を()()とか言いやがって、何ちゅうムカつく女だ!? このブスと言いたいところだが、悔しいが顔も整っていやがる。少し奴の顔を凝視してマイナス部分を見つけてやろうと思ったが、見つからなかった。唯一ネタとして使えそうなのは、額にある六芒星の形をした黒子だ。  それにしても何だよコイツ、容姿端麗とかふざけんな! しっかし、今のこの時代になんっつぅー古めかしい恰好してやがんだ。またそれも物凄く様になってるのがまたムカつく(怒) 「おい、じっちゃん何でこの女と……ってじっちゃん?」 「なに、もうアナタのお爺様ならとっくに帰ったわ。それよりさっきからジロジロと薄汚い」 「なっ、ちげーよ。そういう意味で見てたんじゃねー。つーかなんなんだその古い恰好はよ!? 巫女さんのコスプレか?」 「はあ、愚か。グシャっと潰してやりたいわ。愚者だけに」 「おい、それもしかしてギャグか? 寒いぞ」 「うぅっ、るさい!? それより、この格好は由緒正しい陰陽師の正装で狩衣って言うのよ」 「狩衣?」 「分からなかったら、あとでスマホで検索すれば、まあ生きて帰れたらの話だけど」 「はっ?」 「しっ、来たわよ。ってあんたには見えないかもだけど……」  来たって何がだよって思ったその時、俺の身体中に大量のゲジゲジが走ったような衝撃が襲った!? 何だコレ? ゾゾゾってレベルじゃねーぞ。コレが修行ってどういうことだよじっちゃん。  俺の目の前には、牛顔の巨大な蜘蛛みてーな化け物がいた。  間違いねー牛鬼だ!?  なんでこんな時代に、あんな化け物が居るんだよ、っていうかよぉ~本当に居たのかよ!? あれは想像上の怪物じゃ無いのか、なんか昔の有名な人の絵にも有ったけどよ、クリソツ過ぎだろう。こんなに似てるってことはだ、アレは実際に見てから描いたってことじゃねーか。 「憐れよの~憐れ憐れ」 「なっ、何がだよこの蜘蛛の出来損ない!?」 「えっ!? あんた霊感が無いのにアイツの姿が見えるの?」 「バッチリ見えてるよ、あの気持ち悪い異形の妖怪だろ」 「え……ええ、そっ、そうよ」  どうやら俺が見えていたことが神奈には意外だったらしい。  それにしてもなんなんだあの野郎……何に対してか知らないが、ずっと同じ言葉を繰り返していた。 「憐れよの~憐れ憐れ」
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