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適切な親孝行
ゴールデンウィークなので思い切って仕事を休むことに決め、2泊3日で親孝行旅行を計画した。
1日目の夜、母はとても気持ちよく酔っ払い、正体不明の酩酊状況に陥って、万歳三唱を繰り返したり、あたり中の人々に感謝感激して眠りについた。
2日目の夜、母は昨夜は酔い過ぎたとの反省を胸に、ほろ酔い程度で温泉に入る。
だが温泉が心地よかったのか、またしても酔いが回ったらしく、大浴場から部屋まで連れて帰る際には、足腰がふらつき目が宙を舞い、余程、おんぶしてしまおうかとさえ思ったが、とりあえず腕と背中を支えて部屋に連れ帰った。
部屋のベッド入ると母は
「何もかも手放しで安心して人に頼り切って酒や温泉に酔いしれる幸せに感謝する」
などの言葉を繰り返して歯も磨かずに眠りについた。
母を喜ばせたいと思って計画した旅行ではあるが、母がいつになく素直に感謝感激していることや、腰が抜ける寸前まで酩酊している状況に不安を感じ、僕は旅の始めから最後までアルコールは飲まなかった。
すると2日目の夜中、旅行に同行していた親戚の1人が浴場で滑り向う脛を強打した。
それを知った母は心配して、僕を叩き起こし薬を出せと言う。
母は酩酊から冷め本来の母に戻り、ケガ人の手当てをするために氷を調達するなど熱心に奔走し始めた。
足腰がふらつくほど酩酊する母の姿に、このままボケ始めはしないかと、僕は不安を感じていたが!
夜中のケガ人の出現は、ケガをした本人には申し訳ないが、その事で母には気合いが戻って来た。
『まだまだ自分が頑張らなきゃ』
と母に自覚させるためにも僕は薬を差し出して、すぐ眠ってしまうことにした。
親孝行と子育ては、やや同じようなものかもしれない。
未来に向かって生き抜く強さを醸成する上で、幸せな時間の中にも、キリリと気持ちが引き締まるような、自分の力が試される緊張感が必要なのだ。
最近、めっきり体力が衰えている母を、つい甘やかしていたが、今回の旅行は、親孝行について、いろいろ反省する機会になった。
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