41人が本棚に入れています
本棚に追加
森の精
https://estar.jp/novels/26104228
この物語は、半分は実話である。
僕は、彼の写真を一枚だけ持っている。
正確には性別は不明、生物学的に何に分類されるものか、それすら不明である。
ある時、とある有名な写真家の一枚の写真を見て、僕は思わず叫んだ!
「これとそっくりの生き物、よく知っている」
すると僕に、その写真を見せてくれたカメラマンのY氏が、僕に魔物の話をして聞かせたのだ。
魔物がいきなり例の大雪山系を縦断する道路に飛び出してきて、そこで何度も交通事故が起きている現実について。
彼の知り合いも魔物のせいで事故に遭い大ケガをしたのだと言う。
僕は実際、その時、ショックを受け、深く反省した。
僕は何度となく、魔物と戯れていた。
魔物に歌を歌って聞かせたり、魔物にリンゴを投げてやったりしていた。
睡魔に襲われた僕が車を路肩に寄せて眠っていると、目覚めると必ず、魔物が近くで僕を見守っていたのも本当だ。
何から僕を守ってくれていたか?!
その辺りには鹿やキタキツネの群れやヒグマが多数生息しており、実際、自然界に存在しない異臭が一つ所に留まっていると、無数の獣が怪しんで、そこへ集まって来るのだ。
不用意に立ちションなどしようものなら、暗闇の中から無数に光る目に取り囲まれ、恐ろしい唸り声が迫ってくるはずだ。
彼らの縄張りを侵そうとする敵として認識されるのかもしれない。
実際、夜遅く、こんな患者が飛び込んで来たことがある。
その道の途中で、立ちションしていたら無数の獣の目が光り、途中で止める訳に行かないけれど、あまりの恐ろしさにズボンのチャックを急いで上げようとしたら、大事な部分の皮を挟んでしまったという。どうにもできないまま、ここまで走ってきたけれど・・・痛いので何とか外してほしいと。
初め、その男性患者に対応した母が、ソレを見て、顔を真っ赤にして僕にこう言った。
「あんなに大きなのは見たことがない。大き過ぎて気色が悪い」
まだ話の概要を聞いてなかった僕は、何のことだろうか?!と思った。大きなダニにでも食われているのだろうか、と。
意味不明のまま、彼のソレを見た僕は、思わず吹き出しそうになった。
確かに立派な一物だった(笑)
後になってみると笑い話だが、当の本人にとっては人生の中でも忘れられない痛い思い出となったであろう。
話しは逸れたが、それ以来、僕は、大自然に対する自戒の念を強くした。
「また会えたね」という妄想コンテストのお題から、一番、また会いたい相手は誰だろうと考えているうちに、アイツのことを思い出してしまった。
アイツに会いたい。
心からそう思うけれど。
実際に、僕はもう二度とアイツを呼び出しはしない。
その意思を固く公に誓うために、この物語を書いておこうと思った。
最初のコメントを投稿しよう!