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果たしてVRゴーグルから見た世界は、青々とした芝生が広がる公園だった。
リアル時間では午後8時だというのに、青空の中、雲がゆっくりと流れていて、白いベンチの前には銀に輝くイルカのオブジェが、ピンク色の水を宙に吐き出していた。
しかも視界全体にうっすら虹がかかってる。
なに、この世界。
……うっかり癒されちゃったんだけど。
「あああ、ダメよ。ここは戦場なの。食うか食われるかだわ!」
CGの顔をパンパンと叩いて、気合を入れ直す。っていうか、相手の男はどこにいるのよ?
あたしは公園を見渡しながら、ウロウロと彷徨った。
人っこひとり、いやしない。
まさか、、、フラれたんじゃないでしょうね?
「はは、マジで?」
あたしは力なくベンチに腰を落とした。
誰かを傷つけようと考える人間は、必ずその報いを受ける。
結局あたしは、自分で自分を不幸にしたのね。
あいつと別れた理由だって、会うたびに愚痴ばっか零してたもんね。
そりゃ、嫌になるはずよ。
「もういいや、帰ろ」
あたしが重い体を持ち上げた時だった。
突然ボワッと音がして、すぐ近くに男が現れた。
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