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鈍感な男
「疑似恋愛アプリ…?」
いつも購読している雑誌に載っていた特集。今はアバターという物を使って恋愛したりするらしい。デートも出来るのか。しかも家で?
きっと高い専用の機械がいるのだろう。……いや、パソコンでも出来るのか?
私は自分で言うのはどうかと思うが、優良物件のはずなのだ。
役職は取締役、収入もいい。性格も穏やかな方で、不機嫌になるのは嫌いなトマトを食べなさいと言われる時ぐらいだ。そんなこと言うのは母親ぐらいしかいないが。
桃先雲海、それが私の名前だ。ピンクの空に海の様な雲の先にいく子供に育つようにと両親がつけてくれた。
年齢は今年で五十になった。両親はもうすぐ八十が目前に迫っているのに息子はまだ結婚が出来なくて、孫を半ば諦めている。
私だってしたいのにできないのだ。好意を抱いた女性に話しかけてデートを何度かすると「鈍い!!」と激怒されてフラれてしまう。
「試しにやってみるか」
アプリをインストールして私のような年齢の人間はいないから場違いかもしれないと不安になりつつ、AIがマッチングしてくれた相手とのファーストデートの通知が来た。
ファーストデートの場所は植物館。これもAIが選んだのか。基準は何なんだろうな。
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