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そしてデートの日。アバターに少しでもお洒落をさせて、彼女が場所などは任せると言ってくれた。
悩んだ末、私はあんみつ屋にして席で彼女を待っていた。
約束の時間を過ぎても彼女は来ない。からかわれたのか。それともあんみつ屋がいけなかっただろうか。ここは若い子に合わせて、カフェとかにしなければ、
「ごめーん!!お待たせ」
今日の彼女は初めて会った時と違い、着物で来た。
「着物が決まらなくて…前日に決めておけばよかった。ごめんね?」
こんな可愛い謝罪をされて怒る男はいない。
「気にしてないよ。この店に合わせてくれたんだろう」
「うん!雲海さん、鈍感だって書いてあったからわかりやすい方がいいと思って」
鈍感な私にわかりやすくしてくれたのかと感激する。
「私ね、実はこのアプリで知り合った人とずっとアバターのみで付き合ったの。だけど、彼、突然いなくなっちゃってさぁ…」
「なんでだろうね」
「さあ、なんでだろうね。知り合いだったのかな?」
辛い話なのに、仁美は明るく話した。その明るさが強がりかもしれない。でも軽そうな見た目に反していて、勘違いされがちな子なのだと思った。
「私ははっきり言われないとわからないんだ。ホテル予約したからと言われたら、ああ親切に泊まる場所を提供してくれたんだと勘違いする」
「ぶはっ!それあんまりだわ~」
「手を繋ぎたいなら繋ぎたい、話したいなら話したい。言葉で伝えてくれなきゃ私には伝わらないんだ」
空気を読め。現代人ではないが、この言葉が嫌いだった。そんな読めるような空気がどこにある。文字が書いてあるのか?なら、見せてみろ。
「じゃあ、ちょうどいいかも。私は、はっきり言い過ぎてキツい性格って言われるから」
伏し目がちに寂しそうな顔をした仁美を思わず抱きしめる。空気の読めない私が何故か彼女の気持ちがわかった気がした。
「君は素敵な人だよ」
「優しいね。ねえ、実際会ってみない?」
仁美と運命を感じた私は現実に会う為、運営に料金を払って、約束の場所は私の自宅になった。
「スキンとローション用意しておいてね」
女性にこんなにはっきり言われたのは初めてで驚きとさすがの私にも行為をするということが伝わり、胸を高鳴らせた。
それから、仁美は私の家で同棲するようになり、子供が出来て、両親は孫を見て泣いて喜び、数年後に二人とも亡くなった。
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