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「じゃあ、雄馬君。明日学校でな!」
俺はヘルメットを被り、次の『浦部拓郎』の家をスマホの地図で確認する。
拓郎は今年転校してきた、大人しい奴だ。
浦部家からは、入っている野球のクラブの都合で家庭訪問は最後にしてくれと要望があった。家庭訪問の時間には帰ってくるという事だろうか。
皆何故か当日の最初~真ん中の方を希望するから、浦部家の要望はありがたかった。
『くれぐれも、家庭訪問先ではお菓子をいただかないようにしてください!』
毎年職員会議で教頭が言っている言葉だ。
その理由も『出したお菓子を食べた食べなかったで親同士のいざこざになる』というのだ。
馬鹿馬鹿しい。
それならば、お菓子を出された家庭で全て食べればいいだけではないか。
せっかく出してもらったお菓子を食べないなんて、勿体ない。
何より学校行事の中で、家庭訪問は俺の一番の楽しみなんだ。
むしろ毎日家庭訪問でもいい。
そうだ、1日に8人、4日かけて回るスケジュールじゃなくて、1日1~2人であれば、楽しみが1ヶ月間になる。
毎日若いお母さんとお話しして、様々な美味いお菓子が堪能出来れば、教師冥利に尽きるというものだ。
あ、水曜日は職員会議があるから外さんとな…。
そんな事を真剣に考えながら、俺は自転車を飛ばす。
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