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雄馬の家から続く大通りを走り、小道へ入って1本道の浦部家。
うっそうとした雑木林のそばの、大きくて古い家だった。
「ほらな、あっという間に着いた」
そう言って俺は自転車を降り、ヘルメットをカゴに入れる。
「遅くなって申し訳ございません、拓郎君の担任の伊豆森でございます」
予定時刻の17時から55分過ぎていた。
だが出てきた母親らしき女性は嫌な顔ひとつせず、俺を笑顔で出迎えてくれた。
「いえいえ、拓郎がいつもお世話になっております。自転車でいらしたのですね。お疲れでしょう、お入りくださいませ」
そう言う女性は派手さは無いが色白で、とても美しい方だった。
俺は雑木林が一望できる縁側を通り、座敷へ通された。
「いやぁ、お母さんでしたか!あまりにもお若くて美しいのでお姉さんかと思いましたよ!」
「まぁ、先生ったら。お恥ずかしいですわ」
出してもらった豆大福も緑茶も高級品のようで、非常に美味かった。
ただ家の中も想像以上に古めかしく、その上、通された座敷の部屋もだだっ広く、とても居心地は良いとは言い難かった。
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