あなたに知ってほしくて

19/23
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
ここはお堅い神学校、そこから出て少しした所、通学路の途中だ。  ふと横を見ると。君は大粒の涙を流して、泣きじゃくっていた。 「この学校では恋愛は禁止なの」 「大丈夫! 僕は君を愛してる! 必ず君を幸せにして見せる……」 「ほんとかな……」  ミルは少しだけ泣き止んだ。 「さっきのカッコよかったね!」 「うん! 二人のゆく道を照らす街灯……一つ一つ辿るんだ!」  僕らはこの言葉通り、薄暗い夕暮れの帰り道を、薄明りの街灯を一つ一つ巡って、家路を急いでいた。  この時のことを、僕は忘れない。時に切なく時に激しく、君のことを思い出して。 「大丈夫、私もあなたを愛してる。必ず二人で幸せになろうよ」  そう嬉しそうに優しく励ましてくれる君に 「そうだね。二人のゆく道はここなんだ、二人で歩く道なんだ」  そんなことを僕は言っていたのを覚えてる。  君の家に着いて、並木道、街灯、大きな家。キスして手を振り、君を君の親に預けた。  ぼんやり帰り道を歩く僕。数分後、携帯電話が鳴り響いた。  何故か震える手で電話に出ると、叫ぶ君の声が聞こえた。“エリィ”って呼んで、悲痛な苦しさが伝わってきたんだ。それで僕も涙が出てきた。 「エリィ! お母さんが……駄目だって!」 「そんな」 「あなたとは付き合えないって!」 「うそ……」 「ひどいよ! どうして分かってくれないの?」  僕はすぐに君の家まで戻った。大きな塀、さっきキスして手を振り、君と別れた場所、そんなことを思っていた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!