あなたに知ってほしくて

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数分後駆け出してくる君。見ると背中にちょっとした荷物を背負っている。家出セットだ。伝わってくる覚悟に、僕は震えた。 「お父さんも駄目だって!」 「そんな」 「あなたとは付き合えないって!」 「そうだ! どこぞのアイドルならともかく、お前みたいな出来の悪い不良に、うちの娘をやる訳にはいかん!」  父親が出てきて言った。  そしたらミルは、 「うるさい! 私達は愛し合ってるんだ!」  と叫ぶ。 「学校は退学だぞ! 先生から電話があった! 親が反対してるんだ、愚かな真似はやめなさい!」  僕は静かに君の手を取り、君の荷物を持つと、僕の家へ向かって走り出した。君を連れ出したんだ。 「結婚するんだ!」 君が走りながら言う。 「あなたと付き合いたい!」 「もう付き合ってるだろ……愛してるよ」 「うそ……ほんとに?」 「当たり前だろ」  ミルの情緒は不安定で、喜んだり不安になったりコロコロ変わる。山の景色のよう。 「うん! 私たちは愛し合ってるんだ!」  雨が降ってきて、二人はボロボロになった濡れネズミのよう。世間に裏切られ、嫌われた二人。ギュっと手を握って、握り締め合った。
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