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朝、いつも見る他校のカッコいい男子生徒なんてモノは現れなくて、私は相変わらずあの曲をぐるぐる聞いてしまっている。ヘビーローテーションだ。だけどなんて歌だろう。私が好きなのは、カッコいい男性で、何度も言うけどダサいのはお断りなのだ。間違えても好きになるはず……なかった。
ターミナルは中継地点。あれから間違いは起こり続けているのだった。電車を乗り換える。朝、こっちの線は、比較的空いていて、座ることができる。
この人との人生を思い描く。この人となら歩いてもいいな。
トイレの鏡に、やっぱり悲しい顔をした女の子が映っていて、私は何か切ないものが胸の中で小さく弾けたのを感じた。
何も変わらないアイドル。愛してあげたいアイドル。母性本能をくすぐられるとでも言うのだろうか。それとも全く別の魅力を私は感じ取っているからだろうか。何も変わらない頭の中のままで、イヤホンの入った鞄を携えて、私は学校へ向かった。
この人となら、たとえ人生が終わっても、歩いて行けるんだ。
ホームルーム前の教室。まばらな人影。しんみりした私の心の中。それをぶち壊すように、
「エリィいるじゃん?」
と、賢の声がした。
「あ、うん、エリィ、いるね」
私は、目でエリィと呼ばれている男の子の背中を追った。
「あいつめちゃくちゃうるさいよな」
「だよね!」
ドカっと机に両手をつき、私は激しく同意した。
エリイ、あいつはうるさい。うるさい男という最低の弱点属性を、彼は持っている。
「ああ。だけど結構いいやつじゃん」
私は驚きであんぐり口を開けたまま棒立ちになってしまった。
「そんなことないよ!」
「と思うじゃん? でも意外といいやつなんだよ」
エリィ、その男取り扱い危険につき排除しなきゃです! とってもうるさいよ!
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