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「いい加減、隠れてないで出て来たらどうですか?」
「おやおや、そんなに声を荒立てんでも儂はさっきから姿を見せておる」
「姿なんて何処にも無いじゃないですか!?」
僕は素早く腰に携えた剣の鞘に左手を添え、右手で柄を握り込み抜刀の構えをとった。そして声の主が何処にいるか警戒を緩めぬまま左右交互を素早く確認した。
「ご主人、ご主人」
「しっ、シルビア。お前も敵に警戒して」
「ご主人、ご主人」
「シルビア、煩いぞ。敵が何処から攻めて来るか分からないんだ。余計な音を立てるな」
「でもぉ……」
「でもじゃない。少し黙っててくれ」
「あいなのです」
一体何処に居る?
日々父上や母上、そしてジルスさんに修行を付けて貰っているといるのに。悔しいが全然相手が何処にいるのか補足できない。
便利眼でさえ補足出来ないなんて、どんな相手だよ。
もしかして、魔王直属の手下じゃないだろうな……。
「一体其方は何を儂に警戒しておる。儂は其方の後ろにずっと立って居るぞ」
!?
なっ、知らない間に後ろを取られていた。
「不思議じゃのう、其方の様なレベルで何故にプラチナウルフをテイムしておるのじゃ。一遍冷静になって彼女に聞くが良い」
ん?
僕には彼を捕捉できていないが、シルビアは既に相手の位置を捉えてると言いたいのか……。確かに、彼女の方が僕よりも強い。
「シルビアっ!?」
「あいなのです、ご主人様」
「敵の位置をお前なら分かるのか?」
「ご主人様……相手は敵じゃないのなのです」
「へっ、敵じゃない?」
「声の主はそこなのです」
「はっ、まさか木とか言わないよね? シルビア」
「それがぁ、あいなのです」
「えぇえええええええええ」
樹木が喋った!!!!!?
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