この木なんの木

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 寝てるって、さっき動いたばかりじゃん。しかも胡坐をってアレ?  良く眼を凝らせば、胡坐をかいている面影は残っているのだが、普通にみるとただ幹から伸びた太い根が地面に大きく隆起している変わった木に見える。でも、いつもこの公園を散歩する人とか、この公園を整備している人間が見たら、きっと驚くに違いない。だって、昨日まで真っ直ぐに伸びてたはずなのだから。 「ふぅーー済まんのぉーー儂は歳じゃて、すぐ疲れてしまうんじゃよ」 「あっ、ご主人。木が起きたなのです」 「うん、知ってる。それはいいとしてパウロさん。その恰好のままじゃまずいんじゃ? 人が来たら騒ぎになりますよ」 「大丈夫じゃ、暫く此処に人はこん。そう地中の根が伝えておる。それより、其方は不思議な力を持っておるのぉーー」 「不思議な力?」 「そうじゃ、儂の声が聴こえておる。いつもは儂は独り言のようにこの公園を訪れる人に声を掛けておるんじゃが、だ~~れも儂のことに気付いておらなんだ」 「ご主人様は気付いたなのです」 「そう、其方は儂の独り言に反応した。正直歓喜したわい。まさか、人間と話をできる日が来るとはのう。長生きしてみるもんじゃ」 「はあ……」 「どうやらご主人はどうでもよさそうなのです」 「シルビア、それ余計」 「すいません……なのです」  それよりパウロさんは独り言って言ったよな。それって本当に僕にしか彼の声が聴こえないってことなのか? しかしどうしてだ、これは便利眼とは違う。便利眼ってのはあくまで瞳に関連した力だ。音の場合は、聴力に関する力じゃないとおかしい。  これって一体どんな能力が開眼したんだ?
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