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そう言えば、シルビアはパウロさんの会話に反応していた気がするが、違うのか?
「ねえ、シルビア」
「はいなのです」
「シルビアはパウロさんの声は聞こえてるんだよな?」
「はいなのです」
「みたいですよ、パウロさん。シルビアもあなたの声は普通に聞こえています。きっと、僕以外の人もあなたの声が聴こえてるのでは無いでしょうか?」
「彼女は、人間ではないじゃろう。儂には見えるぞい、彼女は狼の魔物じゃろ」
あはは……そうだった。最近コイツと当たり前につるんでいたので、例えモンスターだとしても、知らぬ間にそんな感覚で見ることを止めていた。
「それじゃあパウロさん、人間以外の魔物なら皆あなたの声が聞こえるんですか」
「そんなの、もちろんじゃ常識じゃよ。なんじゃお主、案外何も知らんのじゃな」
「ええ、すいませんまだまだこの世界について勉強不足なので、まさか木が動いたり話したりするなんて思わなかったです」
「ふむ、それもそうじゃな。儂が動いたり話したりしたのを見た人間は、お主が初めてじゃからのお」
ワッハッハじゃないし。あなたと話したことがある人間が他に居ないなら、さっきの常識は非常識じゃないのだろうか。恐らくこのことは父上も母上もご存知ないと思う。
それよりもせっかく会話が出来るなら、彼が見て来た歴史について話を聞いてみるのも良いかもしれない。此処から勇者の最期の死闘を見れたのかは分からないが、彼を葬った相手が誰なのか駄目元で尋ねてみよう。
「パウロさん、一つ質問良いでしょうか?」
「うむ、構わんぞ」
「パウロさんは勇者マケルシカナイトの最期の戦いをご存知ですか」
「うむ、知らん」
うむって言ったのに……知らんってどっちだよ!?
「知らないですか、分かりました。ならいいです」
「スマンのう、此処からでは流石に王都の教会は見えなんだ。どのみち歳で視力も悪いしのぉーー。じゃが、ちょっと待ってくれぬか、見たものがおるか尋ねてみよう」
「えっ、尋ねる?どうやって?」
「儂を誰じゃと思うとる。儂は木じゃぞ、上を見てみい」
言われた通りに顔をあげると僕はポカンと口を開けたままその光景に驚かずにはいられなかった。
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