新しき力

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 あの冒険者にしてドワーフのジルスさんなんだけれど、実は僕が9歳の頃再び彼はこの町に来た。またある事で護衛を頼むことになったんだ。でも、その時の護衛対象は僕じゃなく、侍女のアンナさん一人。こう言うのもなんだけど、修行の毎日で僕も随分逞しくなったし、僕には沢山の護衛が付いている。と言っても数え方は匹なんだけど。  彼女は僕達の為に季節の山菜を詰みに出掛けたんだけど、山でモンスターに襲われた際、身を挺して彼女を庇ったことで、彼は大怪我を負ってしまったんだ。最初は僕が5歳に見せた回復魔法を頼りに戻って来たんだけど、残念ながらあの力は発動しなかった。その代わり僕のテイムするシルバの回復魔法でなんとか一命を取り留めた。暫くは死の淵を彷徨っていたのか、意識はなかなか回復しなかったんだけど、そんな中アンナさんの懸命な看病が功を奏したのか、一ヶ月経過したころには意識は無事回復をしたんだよね。  まあ、その後は言わなくてもだけど、二人は恋人の関係となり、彼は冒険者を止めて家に護衛兼執事に収まったってわけ。  当然僕は彼からアックスの使い方も教わり、それなりに使いこなせる様になった。  普通なら、ごく一般家庭の家には使用人なんかはそんなに必要無いんだろうけど、もうその頃には男爵の爵位を賜わることは確定していたので、そうなると色んな社交会ごとも増える為、どうしても人手が必要となり、いつの間にか我が家は大家族となっていった。  と言う訳で10歳になる頃には、イスカの町から出る事となり、なんと僕等は王都の近郊都市に移ることになったんだ。今僕が住んで居る町じゃなくって都市の名は、と言う場所で、父様が騎士団の隊長を勤めて居た頃にお世話になったメレンデス侯爵様の管轄する都市らしく王国からちょうど向かって南の位置に有る大きな都市で海に面して居た。  そこには多くの船が行き交い、交通、交易のみでなく、防衛軍のラインとしての魔導戦艦等も停泊しており、初めてそれを見た時はもうワクワクで一杯だった。
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