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正直此処に来て毎日が有る意味冒険の日々だ。イスカの場合は外へ出ても何処も同じ建物ばかりで退屈だった。それとは逆に、この場所は何処までも広がる海が見え別世界だ。イスカに居た頃は父様や母様の指導以外はもっぱら家でブックワームの日々が続き、本の世界で見分を広げた。
しかし此処サザンオートクロスに来てからは外への探索が多くなっている。まあ、殆どが街巡りや海へ行くことが多いんだけど。
それにしても以前の田舎の町と違って色とりどりの建物が建ち並び沢山の人々が道を行き交っている。その中でも一番のお気に入りは何といっても街と港を一望出来る自然公園に聳え立つ巨木のカウリトゥリーでの眺めだ。
なんとこの木は長寿らしく樹齢1500年との事らしい。
「この木は僕の知らない色んなものを見て来たんだろうな」
「そりゃそうじゃよ」
!?
誰だ?
誰かいる……のか?
父様と母様に修行をして貰っているのに、僕が相手の気配を感じとれないなんて。慌てて辺りを見回したが誰も居ない。
下か、それとも上か?
「何をキョロキョロしておる坊や、儂は此処じゃ。さっきから一歩も動いておらぬぞ」
まただ、声が確かにする。
気の所為じゃ無い、なのに何処にも人影が無い。
一体どういう事だ。
誰かに狙われる何て事は無いと思うけど、普段から父様と母様に決して油断して行けないと教えられてきている。魔王の手下はずっと沈黙したまま、でも何時現れてもおかしくは無い。
クソッ。
こうなったら仕方が無い。新しい便利眼の能力を使うか。
━━索敵眼を発動しますか?
ああ、頼む。
因みにこの索敵眼、通称ホークアイと呼んでいる。
猛禽類の視力にあやかって付けた名前だ。
━━了解しました、索敵眼を発動します。
━━発動しました。
━━条件を指定してください。
敵対心、動物、虫以外。
━━了解しました。
━━索敵を開始します。
因みに索敵眼ってなんだ? って思うかもしれない。これは新しい俺の便利眼の能力の一つで、索敵眼。最大約半径1キロ辺りに居る全ての生物を補足することが出来る。それが例え見えない相手も可能らしい。この力についてはあの本屋のオーナー、ロンベルさんから購入した一冊の本に記されていた。
もちろん記されていたと言っても、魔眼と同等の力を持った能力を持たない人間には、その本は唯の御伽噺の本にしか見えないのだが……。
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