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彼女は一緒に働いていた俺と同じ会社を辞め、ある程度時間の自由が利く仕事を選ぶため派遣会社に登録し職場を変えた。
その目的と理由はただ一つ。
彼女には何をおいても最優先に考えなければいけないことがあるからだ。
子供が欲しいという願望は、今までのキャリアなどあっさりと捨てられるほどであり、頭の回転が速く仕事ができる君が好きだといった俺の言葉などとうに忘れているようだった。
退職を決めた際もそれは相談ではなくまるで経過報告のように伝えられ、頭の中に繰り返し同じ言葉が横切るようになった。
『俺は何の為にここに居るんだ』
モヤモヤした感情は徐々に濃度を増していき、いつしか彼女の姿が見えなくなっていた。
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