彼女の思惑?

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「はぁ生き返るね」 「大げさだなぁ」 「だって、緊張してたんだもん」 いおりちゃんは、コーヒーを一口飲むと、 完全に会社員を放棄した。 「確かに、緊張からの緩和だよね」 俺もその気持ちはよくわかる。 意外にも人付き合いが苦手な俺にとって、 クライアントとの打ち合わせは、 思いのほか神経を使う。 「だよね」 同意されてうれしいのか、 笑顔を見せる。 こういう笑顔を“キラースマイル”っていうんだろう。 本人は意図せずとも、 異性を惹きつける。 いや、異性だけじゃないかもしれない。 うらやましい性質だ。 「そうだ、君津さん」 ふいに吉永さんが会話に入ってきた。 「戻ったら、先週の、 持って帰ってくださいね」 何だこいつ。 いおりちゃんと彼にしか、 わからない話題ふってくるなよ。 「あぁ、あのお茶ね」 いおりちゃんはいやな顔せずに、 話題を俺たちに開示してくれる。 「うちの商品の試作なんだけど、 私の提案した味が、見事に外れてさ」 ね、と吉永さんに同意を求める。 彼はうなずき返すだけだ。 「責任もって持ち帰れって言われちゃって(笑)」 「そりゃ、何とも言えないねぇ」 らいと俺は顔尾見合わせて苦笑する。 「あと2本あるんだよね…」 と言った後、ハッとした顔をして、 「そうだ、らいに1本持ってくよ」 「いや、失敗作って聞いたらいらんわ」 「えぇ」 章かに不服そうにストローをもてあそぶ。 「いや、俺には何の責任もないから」 このやり取り、この空気感は幼馴染ならではだな、 とほほえましく見ている。 「はは、僕も遠慮したんですよね」 またもや吉永さんが入ってくる。 「着眼点はよかったんですけどね。 ちょっと残念だったですよね」 そう言って、目を細めていおりちゃんを見る。 あぁ、そういうこと…。 「そう言えば、らいのお姉さんも、 不思議な味のお茶飲んでたよな?」 何となく俺は意図的に話をそらしていく。 「あぁあれな。」 らいは苦笑いする。 「女子って、たまに謎の飲料口にするよな」 「え?珠樹(たまき)さん何飲んでるの?」 たまきさんとは、らいの姉ちゃんだ。 幼馴染ってことは、らいの姉貴とも仲良しだろう。 そう読んだ俺の話題は正解だった。 この話題は、吉永さんにとっては蚊帳の外だろう。 「あぁ、またなんか美容の水みたいなやつ」 「えぇ、私も飲んでみたい。 珠樹さんっていいもの知ってるんだよね」 らいのお姉さんはネイリストだ。 「私ね、らいのお姉さん、推しなの」 目をキラキラさせてる。 「へぇ、俺も一度お会いしたことあるけど、 確かに素敵な人だよね」 すっかりため口で話す俺ら。 「明後日姉貴休みだから、夜くれば?」 「うん行く」 即答。 「そうだ、この前言ってた雑誌も見せて」 「うん、いいよ。 あ、じゃぁ飯食ってく?」 「うん、たべるぅ」 そんならいといおりちゃんを、 俺は微笑ましくみていた。 が、吉永さんは複雑な表情で見ている。
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