11人が本棚に入れています
本棚に追加
魔王
魔界の城へ戻った魔王は静かにワイングラスを傾けた。
「……」
ビーナスも複雑な顔で食事を取っていた。
「ぬうゥッ、そうじゃァビーナス」
「はァ、なんだよ。ジジー?」
「ジジーではない。パパと呼べ。パパと」
「知るかよ。なにがパパだ」
ビーナスは、ふて腐れてそっぽを向いた。
「吾輩は決めたぞ」
「え、なんだよ。懲りずにまた芸人になるって言うのか?」
「いや、芸人になるのは中止じゃァ」
「あ、そう。じゃァ何やるんだよ?」
「吾輩は、これより最強のプロレスラーになるんじゃァ」
「な、なにィーーーッ。プロレスラー?」
「よかろう。じゃァ、ビーナスも掛け声を一緒に!」
「か、掛け声って、マジか……?」
「いくぞォ。いち、にぃの、サンダー」
魔王は景気よく腕を突き上げた。
閃光が疾走り抜け、耳をつんざくような雷鳴が轟いた。
「それ、やりたいだけだろう……」
呆れた顔でビーナスは魔王を見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!