魔王&ビーナス

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魔王&ビーナス

「そして吾輩の相方は……?」  魔王は隣りを見るがまだビーナスは出て来ない。 「ぬうゥッ、どうした。ビーナス?」  すぐに魔王は舞台袖にいる愛娘を呼んだ。  躊躇(ためら)っていたビーナスもふて腐れた顔でステージへあがった。  スポットライトが当たると、まるでアイドルのような圧倒的な美少女だ。 「おおォーーーッ、可愛ィィィーーーーッ」  観客席のアイドルオタク少年たちが身を乗り出して歓声を上げた。ひと目でファンになったようだ。 「グワッカカカ、ご覧いただこう。この可愛らしい美少女こそ吾輩の愛娘(まなむすめ)、ビーナスじゃァ。さァ挨拶をせぬか」 「はァ、うるせぇんだよ。ジジー」  いつものようにビーナスは年じゅう無休の反抗期の真っ只中だ。 「ぬうゥ、ジジーではない。吾輩のことはパパと呼ぶんじゃァ!」 「ふざけんな。その顔のどこがパパなんだよ。ド派手な隈取りするなァ!」 「愚か者め。これは吾輩の素顔じゃァ」 「はァ、だいたいなんだよ。派手に登場すれば良いってモノじゃないだろう。恥ずかしいんだよォ!」 「カッカカッ、吾輩としては、ちょっとばかり控えめ過ぎたかのォ。もっとド派手な降臨が良かったかァ?」 「あのねえェ、どこが控えめだよ。ただでさえド派手な化粧をしてんだから!」 「ぬうゥ、化粧ではない。この顔は素顔じゃァ」 「知るか。どこの閣下だよ。聖飢魔IIかァ。これ以上、趣味の悪い登場をして、どぉーするんだよ。新日のドーム興行かァ。引退したグレート・ムタでも出てくるのか?」 「カッカカッ、安心しろ。これでもコンプライアンスに(のっと)っておとなしく登場した方じゃ」 「どこがおとなしいんだよ。何のライブパフォーマンスをする気だよ?」 「ド派手なのは致し方あるまい。吾輩の有り余る魔力のなせる(ワザ)じゃァ。グワッカカカァ!」 「なにが有り余る魔力だ。ハリー○ッターか!」  いつものようにビーナスはツッコんだ。 「どうした。最近、不機嫌だな。吾輩に出来ることなら、なんでも叶えてやろう。なにをして欲しいんじゃ。お菓子か。言ってみろ。ビーナス?」
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