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ビーナス
「そうだよ。ハードルの上げ過ぎなんだよ」
「カッカカァッ、ハードルは高いほど、やりがいがあるのじゃ」
「ムチャくちゃなコトを言うな。他のクラスの見物客から『ビーナスはどいつだ?』って訊かれて『私だけど』って応えると、メッチャ微妙な雰囲気になるだろう」
「なんでじゃァ、女芸人イチバンの美少女じゃァ。文句はなかろう」
「なんで、女芸人限定なんだよ」
「カッカカッ、笑ってごまかせ」
「ごまかすなァ。だいたいなんで魔王の娘がビーナスなんだよ」
「カッカカカッ、そりゃァ、魔王の気まぐれじゃァ」
「どんな気まぐれだよ。ビーナスなんて厄介な名前をつけられた方の身にもなれ!」
ビーナスは頭を悩ませていた。
「いいか。よく考えてみろ。ビーナスはこの世のモノとは思えないほどキュートで可愛らしい存在なのじゃ」
「そんなことあるかァ。クラスじゃァ笑いモノだよ」
「なんじゃとォ。笑ったヤツらの個人情報を寄越せ。孫子の代まで袋叩きにしてくれよう」
「よせよ。私のことは放っておけよ」
「なんでじゃァ名前がビーナスなんじゃァ。今のところかろうじて美少女だから笑い話しになるが、ブサイクだった日には笑ってごまかすしかないじゃろう!」
「なんだよ。それは。かろうじて美少女って。結局のところ美少女でもブサイクでも、どっちにしろ笑ってごまかすんじゃねえェか」
「なァに、安心しろ。今はかろうじて美少女だが、これからまだまだビーナスにはノビシロがあるんじゃ」
「クリーピーナッツかよ。どんなノビシロだよ。本田圭佑じゃないんだから!」
「な、これでわかったじゃろう。ビーナスは女芸人としてはトップクラスの美少女なんだ。文句などないじゃろう!」
「だから聞いているのかァ。文句は大ありだよォ。なんで女芸人限定なんだよ!」
「カッカカッ、気にするな。魔王の気まぐれじゃァ」
「だから笑ってごまかすなァ!」
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