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それは、遥かな過去。
子アナグマだったシベルは、母アナグマと寄り添ってこの獣道を歩いていた。
「坊や、あんただけだったよ。生き残れたのは。」
このアナグマ家族は、余りにも残酷な不幸に見舞われた。
突然、森に現れた密猟者。
趣味で狩猟に講じて、次々とこの森の鳥獣を銃で殺める心無いハンターにアナグマ家族は目を付けられた。
アナグマの巣穴に燻り出された兄弟達が、次々とハンターの銃の犠牲になっていく。
そして、唯一生き残った子アナグマのシベルを庇って父アナグマが目の前で射殺された事が、子アナグマのシベルにはトラウマになり暫くは巣穴の奥で踞ってひきこもっていた。
「シベル、大丈夫よ!!出ておいで!!」
心を閉ざした子アナグマのシベルに呼び掛け続けたのは、母アナグマだった。
「シベル、シベル。ずっとここに居るつもりなの?居残ってたって、もう父や兄弟は帰ってこないわよ。」
「・・・・・・」
母アナグマが何度とシベルを呼び掛けても、子アナグマのシベルは巣穴の奥の方で無言で塞ぎ混み続けた。
「困ったわ・・・どうすればシベルを外へ出せるんでしょ・・・」
それは、ある深夜の事だった。
巣穴の奥から、モゾモゾとすっかり痩せこけた子アナグマのシベルが出てきた。
「母ちゃん、なあに・・・?」
「シベル、出ておいで。満月が美しいよ。」
子アナグマのシベルは、そっと夜空を見上げた。
すると、大きな満月が空の上で煌々と子アナグマのシベルを照らしていた。
「ほうらごらんシベル。あの満月は父さん。そして、輝く星ぼしはあなたの兄弟よ。
こうやって、あなたを空の上で見守ってるんだよ。」
母アナグマはそう言い聞かせて、満月を見上げていた。
「母ちゃん・・・」
「シベル。一緒に歩こうか。」
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