10話 アイビーカット

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10話 アイビーカット

 魔法学園に通う生徒は五十名。初級クラスは二つあり、それぞれ十六名が所属。中級クラスは一クラスで十四名、上級クラスは四名で構成されている。クラス分けは入学試験で決まるが、三ヶ月に一度、見直しが行われる──と、リンダから聞いた。 「もし中級で卒業したら、就職の選択肢も一気に広がるかもしれないね~。もぐもぐ」 「へー、そうなんだ。もぐもぐ」  学園の食堂で昼食をとっているところだ。 「せやねん。全然ちゃうわ~。もぐもぐ」 「ガレスさん、教えてや~!」  最近、なぜかガレスも一緒に学食で食事をしている。彼は普通に隣に座っているのだ。 「あんな、俺は王太子専属の騎士で決まっとるけどな……」  ガレスの話をまとめると、初級は地元の役所の魔法係として、地域住民の困りごとの相談に乗って解決する。中級は省庁に所属して、もっと大きな問題を取り扱う。例えば災害の救援や復興、軽い魔物の退治や犯罪者の確保がある。そして上級は、王国の魔法師として認められて、主に大物の魔物を退治する──らしい。  そうだった! あたしには魔法の才能があることがわかって、将来の夢は役所の魔法係に就職して、地域住民の役に立つことだったんだ。両親も喜んでいたよ。よく平民の娘が魔法学園に合格したと言ってくれた……ん? 両親? 両親って誰だっけ? あたしの両親は平民じゃない。侯爵だよ。髭面のヤマアラシのような強面の……。 「あっ、遅れちゃう! 授業始まるよ。早く行こう、アリアナ!」 「あ、うん!」と、急いで教室に戻った。 「──これから課外授業について説明します」  教室がざわざわと騒がしい。多くの生徒たちは、課外授業は遠足や合宿のような楽しいものだと思っているようだ。いや、あたしも同じようなイメージを抱いている。 「十人を一つの班にして、三つのグループに分けます」  アレク先生から班分けが発表されたけど、あたしとリンダの名前は呼ばれなかった。不安に思っていたところ、先生が近づいてきて、 「アリアナさんとリンダさんは別グループに入り、特別な課外授業を受けることになりました」 「えっ!?」 「別グループ?」  思わずリンダと顔を見合わせる。驚きよりも困惑気味な表情だった。だって、このクラスでわいわい楽しく過ごしたかったからだ。 「二人とも体育祭で見事な魔法を披露しましたね。本当によく頑張りました」  笑顔のアレク先生から頭を撫でられた。正確にはアレクちゃんを、だけど。でも嬉しい。先生に褒められることが何よりも大好きなのです。 「先生、別グループとは?」 「ああ、そうでした。アリアナさんとリンダさんは王太子の推薦で、中級クラスの一班に参加していただくことになりました」 「王太子の推薦!?」 「中級クラスで!?」  すると、クラスメイトたちから「おおっ!」「すげぇ!」「やったね!」などの称賛の声が上がり、少し照れくさかった。 「別グループの詳細説明は、中級クラスで行いますので、そちらに移動してください」 「はい!」と元気よく返事をしたものの、寂しさは否めなかった。先生に引率され、一緒に過ごすことができないのは残念だ。あたしはリンダと教室を出て行きながら、アレク先生の素敵なアイビーカットを見つめていた。
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