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21話 進級試験で対峙
ヒス女史が見守る中、あたしとリンダは園庭で電光少年やソフィアと対峙していた。進級試験だそうだ。
「アリアナ、リンダ頑張れ~!」とガレスの声援が飛んだ。彼の頭にはアレクちゃんがへばりついている。一時的に預かってもらってるのだ。
「アリアナ、園舎を見て見て!」
「え、なに? リンダ?」
教室の窓にクラスの生徒たちが応援してる姿が目に映った。一階には初級クラスの友達がいて、アレク先生も一緒だ。
「よおし、先生も見てるから頑張らないとね!」
「うん!」
さらに二階の中級クラス、そして三階の上級クラスの生徒たちも窓辺で眺めている。王太子、セシリア、レンオハルト。エリザベス以外の錚々たるメンバーたちだ。皆が注目してるんだと感じ、ちょっぴり緊張してしまった。リンダもメガネが曇っている。
「先生、試験はまだ早いと思うけど……本気出していいですか?」
リックはやる気のない素振りを醸し出しながら、ヒス女史につぶやいた。彼とはあれから数回スパーリングしたけど、攻撃を仕掛けることはしなかった。その理由は、リックが怪我をする可能性があると心配したからだ。アレクちゃんがいないと、驚くほどのパワーを発揮することに気づき、自分でも制御できないと感じていたのだ。
「いいわ、でも皆んな結界衣を着用すること」
「えっ? 僕も?」
「一応、試験のルールだからね。ソフィアも着なさい」
「えー、そうなん? 面倒くさいな~」
「……相手は格下だけど、仕方ない。じゃあ、早く終わらせよう。アリアナ、リンダ、怪我するかもしれないけどごめん。行くよ!」
リックは空高く舞い上がり、一回転しながら迅速に電光を放ってきた。前方のあたしは左右に素早く動き、身をかわす。リンダは彼に向かって土壁を放ち、混乱させる作戦を実行する。事前に計画していた戦術だ。
「なるほど。狙いが定まりにくいな」
リックは地面に降り立ち、手を大きく広げるかのように動かし始めた。
「天空に宿る稲妻の力よ、我が手に集い、輝き放て。雷光の矢、イリュミネート・ボルト!」
その瞬間、光り輝く稲妻のような電光が指先から放たれる。それは空気を切り裂き、一つ一つの光がまばゆい輝きで周囲を照らしながら鋭く突き進み、驚異的な速さであたしたちに迫ってきた。
「ふふんだ。想定内よ!」
あたしはすかさず左手を突き出し、呪文を唱えた。
「銀の氷よ、その輝きで我が身を包み込め。氷魔法、ミラー・コート!」
透明な氷の鏡があたしとリンダを包み込み、リックが放った電光を反射させる。その電光は直線的に彼に向かって戻っていく。
「はっ!?」と彼は驚きながら、身体を何度も反転させてかわす。
「氷属性? アリアナは火と風に加えて氷も使えるのか?」
リックの表情に初めて焦りが浮かぶ。
園舎からは「おおっ!」と大きな歓声が湧き起こった。ヒス女史は目を輝かせ、その能力に期待を込めた感情を抑えているように見える。
「電光少年、動けなくしてやるからね!」
彼を傷つけるつもりはない。だけどこの試験を終わらせるために、あたしの魔力の凄さを見せつけて、彼の戦意を喪失させるしかないと思った。リックの得意な電光に、電光で対抗するのだ。
「雷神の怒りよ、四方に放たれんことを示せ! 轟雷の舞、ライトニング・シャワー!」
ピカッ! ゴロゴロゴロゴローー!
「なにぃ!?」
強烈な稲妻が彼を囲むように東西南北に放たれた。彼は一歩も動けない。呆然とした表情を浮かべている。
「な、何なんだ……今度は雷属性? 信じられない。アリアナは四つもの複合属性なのか? そんなやつ、滅多にいない」
さすがに園舎は静まり返った。つい最近までただのモブ乙女だったあたしが、とんでもない魔力の持ち主だと証明してしまったのだ。それは中級クラスの能力を超えていたようだ。
「すごいやん! じゃ、自分の出番やな!」
戦意喪失のリックに代わり、木刀を振り回しながらソフィアが参戦する。
「アリアナ、ここは任せて」
「え、いいの?」
「私もいいとこ見せたいの!」
リンダは前が見えないほどメガネが曇り、本気モードになっていた。
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