04話 猫が王太子公認

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04話 猫が王太子公認

「おいおい、お前猫飼ってんのかよ!?」  騎士にドヤられ、思わずビビってしまう。 「ひぃっ。え、えっと……実は、拾っちゃったんですよね。その、可愛くて、ちょっと面倒見てるだけなんです。……エヘへ」  恥ずかしそうに答えたけど、風紀に反すると騎士が言い放つ。 「ダメダメ! 寮で動物飼うのは禁止だろ! すぐに放すんだ!」  予想はしてたけど厳しい言葉が飛んできて、あたしは身を縮めてしまった。お別れするのは寂しい。アレクちゃんを見つめ、「うぅっ、こんなに可愛いのに~」とつぶやいてしまった。すると──。 「待て」  唐突に王太子が口を開いた。あたしは驚き、疑問と恐怖を感じながらも、その言葉を待った。 「その猫から魔力を感じる。お前も感じるのか?」 「魔力? えっと、それはぜんぜん……まったく」 「ふん、突然の雷雨。その威力、スピード。あれは上級魔法だ。誰かが猫を介し、操作したに違いない」  えっ、なんてカッコつけて言ってるの? あの雷雨は金髪のあたしが。いや、それは置いておこう。 「お前に命じる。猫を監視せよ。ひとときも目を離すな」 「あの、じゃあ飼ってもいいってことですか?」 「監視だ」  王太子の表情は厳しい。  まあ、同じことよね。でも、嬉しいっ! 「王太子殿下、承知いたしました。アリアナだけで見張るのは大変ですので、私たち寮生も手伝います」  リンダがメガネを曇らせながら、代わりに返事をしてくれた。 「よーし、それじゃ各部屋のチェックを始めるぞ。先ずはアリアナ、お前の部屋からだ」  部屋のチェック!? まさか片付けてないとバレちゃうよ!? 「あ、あの~、騎士さん?」 「ガレスだ。ガレス・エルトン。フルネームで覚えておけよ」 「はい、ガレスさん。少々お待ちください」 「いいからさっさと案内しろ!」 「うぅっ」と、もはやあきらめムード……。  いやはや、部屋は大惨事だった。服は散らばりっぱなし、机の上は書類や本でごちゃごちゃ。風紀委員会の方々にくしゃくしゃな部屋を見られて、王太子の顔も引き攣っている。 「明日までに掃除しとけ!」と、ガレス•なにがしから厳しく指導され、必死に掃除をすることに。リンダも手伝ってくれたので、なんとか夜中までに部屋を片付けることができた。  そして翌朝。  リンダと登校中、周りからの熱い視線が気になって仕方ない。アレクちゃんがカバンから飛び出して、あたしの跳ねたボブヘアの上にへばりついてしまったのだ。戻そうとしたけど、かわいそうだから「ま、いっか」って自由にさせている。 「アリアナ、その髪型新鮮だね!」 「あはは、ありがとね!」 「猫ちゃんが頭に乗っかってるもんね!」 「……」  頭に猫を乗せて登校する人はこの世にいない。もちろん注目集めること間違いなし。めちゃくちゃ目立つ。モブなのに──。  教室でも子猫が王太子公認という噂が広がり、生徒たちはもちろん、アレク先生までもが可愛がってくれた。しかし、『アレクちゃん』という名前がバレてしまい、あたしは恥ずかしすぎて穴があったら入りたい気持ちだ。 「おい、アレクちゃんの魔力借りちゃえよ?」  手加減する術を知らないあたしは相変わらず火力不足で、クラスメイトから揶揄われていた。でもリンダは昨夜、王太子と話したことで気分が高揚し、それが魔力に影響されたのか、りんご大の炎を出すまでに成長している。 「あー、うらやましいなリンダはー。もぐもぐ」 「うふ。私、ちょっと覚醒したのかな。もぐもぐ」  お昼休みにランチしてた時のこと。学食のすみっこで話してたら、見覚えのある怖い、丸い顔の人が近寄ってきた。 「お、ここにいたのか。アリアナ」 「あっ! ……えっと」 「おい、名前忘れたんじゃないだろうな?」 「ガレス・エルトンさん!」  リンダが即座に答える。 「うむ。で、きれいになったか?」 「えっと、部屋は昨夜……もぐもぐ」 「ん?……って今、口に入れるか?」 「お掃除の確認ですね。でしたらばっちりです」  リンダが再びフォローする。 「よし。まあそれはさておきだ、二人に用事がある」 「えっ、私もですか!?」 「ああ、放課後、上級クラスに来てくれ。我らの隊長が話したいそうだ」  隊長? だれだっけ?  「はいっ、必ず参ります!」  リンダが前のめりで即断即決する。あたしはポカンとしつつも少し嫌な予感がした。
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