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 職場の後輩、松本さんに対する恋心を自覚したのは1ヶ月ほど前のこと。  見た目も性格もおっとりとした彼女のことは以前から同僚として良く思っていたが、4月から発足したプロジェクトで共に過ごす時間が増えた結果、仕事に対する一生懸命な姿勢や意外にもお茶目な一面を垣間見ることとなり、ただの後輩への好意はあっという間に恋へと変わった。 「なるほど。それで今回相談を」 「はい……恥ずかしながら生まれて32年間、恋人なんて出来たことがないもので、どうしていいのかまるで分からないんです」  好きで好きで仕方ない。けど、アピールの方法が分からない。そんな学生のような悩みを抱え、ネットで漠然と恋愛について調べていた時に偶然見つけたのがこの恋愛アドバイザー・藍沢さんの相談予約ページだった。  今思えば他にも恋愛相談の場所はあったかもしれない。だけどその時の僕は何も考えず衝動的に予約した。それは出会ったタイミング、状況など様々な偶発的要素がそうさせたのだろう。  さながら恋のように、運命はこうして僕と藍沢さんを引き合わせた。 「安心してください。こう見えて、私はその道40年のベテランなんですよ」  胸を張る藍沢さんに僕は目を剥いた。その道40年? 仮に20歳からアドバイザーをやっているとして、現在60歳ということになる。とてもそんな歳には見えない。  モテる人は人種からして違うのかと若干ショックを受ける僕に、藍沢さんは優しく問いかけた。 「最初に質問ですが、河野さんは『恋』って何だと思いますか?」
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