3/4
前へ
/12ページ
次へ
 いきなりの難問に僕はうんうん唸る。初めての恋なのに、そんな本質を突くような質問されても……。 「ふふ、分からないですよね。では答えをお教えしましょう。恋とはずばり……『脳内物質が作り出す科学的現象』のことです」 「カガクテキ?」 「ええ」と藍沢さんは頷く。 「ある研究によると恋愛初期の脳ではドーパミンやアドレナリンなどが盛んに分泌されるそうです。つまり、それらの快楽物質による高揚感こそが、恋という感情の正体。  逆に言えば、それらが分泌されているというだけで一緒にいる人に対し『好意がある』と脳が錯覚し、恋に発展することもあるのです」 「錯覚?」 「吊り橋効果はご存知ですか?」  藍沢さんの問いに僕は頷く。彼の言葉の意味するところがなんとなく分かってきた。 「吊り橋の上のようなドキドキする状況、すなわち脳内物質が大量に出ている状況を共に経験することで、相手に恋をし易くなる。これは恋が科学的現象であることの証明です!  ……少し夢のない話をしてしまいましたが、これはチャンスでもあるのですよ」 「と言いますと?」 「科学的な手法を用いて、意図的にお相手の方が河野さんに好意を抱きやすい状況を作り出す。今日の相談でそのテクニックを伝授させていただきます」  不敵に笑う藍沢さんに僕は「お願いします!」と勢いよく頭を下げた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加